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AND COFFEE ROASTERS (熊本): 2018年2月 #クラスパートナーロースター

今月ご紹介する #kurasucoffee サブスクリプション提携ロースターは、熊本県のAND COFFEE ROASTERS。代表の山根さんに、お話を伺った。

 

山根さんがコーヒーと出会ったのは、ニューヨーク。19歳のころ、短期留学中だった山根さんはルームメイトを通してカフェやコーヒーの文化に魅了されたという。帰国後、カフェやロースターで働きたいと思い探すものの、自分がニューヨークで恋に落ちたコーヒーほど、心動かすものには出会えなかった。


そこで山根さんはレストランの調理場で働きながら、独学でコーヒーの知識を身に着けることに。市場調査のため、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨーク、シアトル、メルボルン、そしてシドニーを巡ってはサードウェーブ系のカフェを訪れ、自らの好みの味、自分の手で生み出したいと思うフレーバーを探っていった。

 

 

山根さんは東京出身。東京のコーヒー業界には、すでに先輩や後輩、友人などがあふれていた。そんな環境の中、自ら東京に出店し、競い合う立場になるよりも、どこか新しい場所でコーヒー文化を花開かせることに魅力を感じたという。


2011年、奥様の出身地である熊本に移住。規模が小さく、路面電車が走り、人がみな暖かい町。どこかメルボルンの住み心地の良さが思い出されるその場所に、山根さんは出店を決めた。当時熊本にはまだスペシャルティコーヒー専門店は存在せず、そもそも豆販売やテイクアウトも含めコーヒー消費量が全国でもワーストに入る熊本でコーヒー文化の影は薄かった。


「熊本の人のライフスタイルって、東京と全然違う。急いでる人がいないんです」と話す山根さん。朝、カフェに慌ただしく立ち寄ってはコーヒーを片手に急いで出勤する人、カフェでの仕事の打ち合わせなど、東京で当たり前のように目にする、ペースの速い生活。熊本では、時間はもう少しゆったりと流れ、打ち合わせのために外に出るといった事もあまりないのだという。

しかし2013年のオープン以来、スペシャルティコーヒーは熊本の人々にも少しずつ愛され始めている。浅煎りを楽しんでくれる人、それまではコーヒーが飲めなかったが浅煎りを気に入ってコーヒーに夢中になった人など、人々にそれぞれのスペシャルティコーヒーとの出会いのきっかけを提供できている事を嬉しく感じている。

 

2016年にはアンドコーヒーブリュワーズ/AND COFFEE BREWERSという、抽出にフォーカスした店舗もオープン。様々な抽出方法や器具、豆の種類やレシピによって生まれる味わいの違いを積極的に紹介・提案するというコンセプトだ。

今後は3月末に東京・日比谷に出店、福岡への出店も検討するなど勢いを見せるAND COFFEE ROASTERS。店舗展開だけでなく、人材育成にも意欲を見せている。「今のスタッフの半分以上が県外から集まってくれました。熊本でももっとバリスタの職業としての地位、価値を上げて、コーヒーをやりたいという人口を増やしたいです」と話す山根さんの願いは、熊本で確かに息づき始めたコーヒー文化の灯を絶やさず、育てていくことだ。

 

最近、Kurasuのスタッフの間でもポジティブな話題となっていたのが、AND COFFEE ROASTERSのフレーバーが変化したことだ。聞けば焙煎機を変えたのだという。以前はフジローヤルの3㎏を使用しており、窯が比較的薄く熱の上昇・下降のスピードが速い特徴を生かし、浅煎りのギリギリのところを狙い素早く焙煎することで、甘さよりもフレーバーや生き生きとした明るい酸を表現していた。

しかしその後、焙煎機を窯が厚く蓄熱に優れているプロバットに変えたことで、じっくりと中まで火を通し、時間をかけて甘さを引き出す焙煎へと変化したのだという。

 

生豆を購入するのは4社から。東京に出向き、産地別にカッピングを行いその都度仕入れるものを決めるのだという。クリーンカップ、酸の明るさ、そして産地の個性。焙煎のフォーカスの変化を経て、AND COFFEE ROASTERSならではのフレーバーはより一層輝いている。

 

最後に、「山根さんにとっての美味しいコーヒーとは?」と問いかけると、少し意外な答えが返ってきた。「気づいたら飲み終わっているのが一番」なのだという。

美味しいコーヒーを探す作業であるカッピングでは、当然ながら味わいの細部に至るまでを感じ取り、酸や甘さを吟味する。時には鳥肌が立つほど感動することもあるという。しかし山根さんにとって、コーヒーは同時に、「あくまでも日常的な飲み物」。

 

「コーヒーって、総称ですよね。音楽、みたいに。その中に、ジャズ、ロックと種類がある。コーヒーも同じで、色々なフレーバー、例えばフルーツに例えられるような色とりどりのフレーバーが、お客さんの頭の中に浮かぶような、その人の『コーヒー』の種類を増やしたい、そう思っています」と山根さんは言う。


「まあ、あんまり気にしないで飲んでほしいんですけどね」と、やや照れ隠しのようにも聞こえる言葉で締めくくった山根さん。その姿からは、既存のものにとらわれず自分の求める味を追求し続けてきたコーヒーへの愛情と、その深さゆえに、スペシャルティコーヒーをただ一過性のものや特別な存在にするのではなく、人々の日常をもっと豊かに暖めるような存在であってほしいと願う、そんな想いを感じた。