冬萌誕生物語
寒風が心地よく吹き抜け、街は冬の訪れを感じさせる季節。そんな季節が訪れる少し前の出来事。
普段と変わらず仕事をこなしていた中、予想外の依頼が舞い込んできました。ヘッドロースターからの一言、「冬のブレンドの企画をお願いします」
仕事をお願いする単純な意味の言葉ですが、何か特別な想いを感じた瞬間です。
何かを託す、託される―その間にある関係性が、仕事に深い意味を添えます。託される人は託す人の想いも背負って仕事をしたい。12月が締めくくりの月となることもあり、少し感傷的になりながらも、「いいモノをつくりたい」という情熱で、冬のシーズナルブレンド「冬萌」の企画がスタートしました。
シーズナルブレンド「冬萌」
今年の“冬萌”に使用した豆は、以下の通り。
Brazil Stefano Um Natural : 40%
Burundi Kibingo FW : 20%
Ethiopia Logita Kenyan Style Washed : 20%
Tanzania Iyura AB Washed : 10%
Uganda Naginzole Natural : 10%
5種類の豆を使用した盛りだくさんのブレンド。実は昨年の5種をブレンドすることを試みました。5つの異なる要素を調和させるのは難しいことですが、冬のシーズナルブレンドに4~5種のブレンドが行われる文化は、Kurasu 焙煎チームにとっては恒例行事になるかもしれません。(来年の冬萌 ブレンディッド by ヘッドロースターも楽しみにしております)
色々とブレンドしたい理由には、買い付けや品質管理といった深い事情が絡んでいます。
「鮮度の高いコーヒーを届けたい」というポリシー
「コーヒーは果実」という比喩は、スペシャルティコーヒーのもつフルーティな味わいに限らず、コーヒー豆にも通ずる話です。とりたての果物がフレッシュだから美味しいように、コーヒー豆にも旬のような、特に美味しく飲める時期というものがあります。コーヒーの鮮度を保つために日ごろから、生豆保管庫の温度管理など、品質管理は徹底していますが、その中には年内に飲んでもらいたい豆たちがたくさんありました。
提供できる量がシングルでは足りないが、どれも美味しいコーヒーたち。これを活かせるのが冬のブレンドであります。
そして、5つの異なる豆の特徴を考慮して試行錯誤の末に完成した冬萌は、私にとって、記憶の中に薄っすらと残っていた思い出の味でした。
追憶の中にある思い出にインスパイア―され
中学卒業まで住んでいた国、韓国。僕の故郷、韓国では 홍시「ホンシ」と呼ばれる柿を凍らしてシャーベットにして食べる文化があります。日本だと山形に近い風習があり「紅柿」といわれ渋柿の種類として区別されているようです。子どもの頃の私は、冬休みに床暖房の効いた部屋の中で、よく「ホンシのシャーベット」食べてました。食べ過ぎてお腹を下すほど好きでしたね。(笑)
この干し紅柿を、冬萌の一つ味わいのアイデンティティにして、届けたいと考えました。秋に収穫した柿を、干すなり、凍らすなりして、渋柿一つ無駄に捨てず冬のおやつとして楽しむ。秋には、ただ渋いだけの柿が、熟してしっとりとした甘さに変わり、寒い冬、コタツで飲むお茶のお供になる。
5種類あれば、淹れる度に豆種類の割合も少しずつ変わってくるので、味の印象がぶれやすいと思われますが、意外とかなり安定的です。
ブラジル、ブルンジの割合が多いときは、ドライフルーツのような熟した甘さがあり、ウガンダがエッセンスになるときは、柿のシャーベットや山葡萄のような凝縮した果実感も味わえます。
抽出のポイント:4投目を穏やかに注いでみよう。
KurasuでおすすめしているHARIO V60の通常レシピ
0-40s 40gの蒸らし
40s-1:10s 60g 注ぐ
1:10s-1:40s 50g注ぐ
1:40s-2:10s 50g注ぐ
このレシピをベースに、今回の冬萌えは、4投目を穏やかに注ぐことを意識してみましょう。
イメージとしては「の」の字を書かずに、一直線で注ぎ3投目から水位を上げるようなイメージ。ブレンドされたそれぞれの豆粒は、大きさが異なるので、全体的な火の入り方が微妙に異なる中で、抽出後半の注ぎ方を変えること。このちょっとした工夫で、よりクリーンな質感で味わえる一杯が出来上がります。
今年の冬は、冬萌のぬくもりに包まれて、寒風の中に隠された冬の優雅なおうち時間を過ごしてください。
We wish you a
Happy Merry Christmas and Happy New Year.
(執筆:Jongmin)
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