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WEEKENDERS COFFEE: 2016年9月 #クラスパートナーロースター

WEEKENDERS COFFEE: 2016年9月 #クラスパートナーロースター
Kurasuから次にお届けするコーヒーは、京都のWEEKENDERS COFFEEから。
京都、富小路通りに佇むのは、白塗りの壁に植木の緑もまばゆい小さな町屋。年月の流れを感じさせる艶のある木柱がモダンな建具と調和し、隅の方にはふくふくと丸く身を寄せ合う苔庭や小さな腰掛が懐かしさを誘う。日本家屋独特の開放的な入り口の向こうにあるのは、7月にオープンしたばかりのWEEKENDERS COFFEE富小路。左京区元田中に焙煎所を構える有名ロースターの新店舗だ。ゆるやかにジャズが流れる店内で、ロースターであり、オーナーとして店を一手に担う金子さんにお話を伺った。
大学進学を機に出身地の福島から京都へ移住した金子さん。
学生時代にカフェで働き始めたのがコーヒーの世界に足を踏み入れるきっかけとなったという。当時はエスプレッソがイタリアからやってきたばかり。今では当たり前のように耳にする「バリスタ」という言葉も、イタリアに行かなければ出会えなかったような時代だ。
初めて働いたカフェで、金子さんはFMI、チンバリ(cimbali)といったエスプレッソマシンに出会う。それ以来コーヒーに関わり続けて20年が経った。
2005年には、日本にエスプレッソ文化を広めることをコンセプトに、カフェWEEKENDERS COFFEEを元田中にオープン。30席ほどを確保し、フードも夜まで提供した。
豆は島根県安芸市で門脇洋之氏の手掛けるカフェロッソから仕入れていたが、順調に営業を続けていく一方、コーヒー以外のメニューの多さで、「お客さんがコーヒーまでたどり着けない」という思いを抱き始める。
そんな頃、お土産としてもらったTim WendelboeやStumptownなどのコーヒーに出会う。深煎り文化の根強い京都とはまったく異なるコーヒー文化を感じさせる浅煎りの甘みに、自分の出したいコーヒーとは何だろう、と考えるきっかけを与えられた。
WBCなどを通して世界の様々なコーヒーを目にし、国外から豆を買い求め、日本の外に広がるコーヒー文化を貪欲に吸収していった金子さん。
深煎りだけではなく、浅煎りの持つしっかりとした甘み、そしてフレーバーを活かしたコーヒーを自分の手で作りたい。そんな想いがつのり、2011年に自家焙煎をスタート。同時にカフェでの提供を徐々にコーヒーに絞り込んでいくことになる。
実際に自ら豆を提供する際には思い切って3カ月店を閉め、元田中の焙煎所で自らの求める豆を目指し試行錯誤を続けた。
ロースターはProbatの5kgを使い、WEEKENDERS COFFEEを代表するエスプレッソはオリジナルの深い味わいを踏襲しながら、徐々に浅煎りも洗練させていった。伝統的な深煎りはスモーキーさを抑えたものを、浅煎りは酸味よりも甘さに重点を置いた焙煎を行っている。


土地柄、豆の個性に関わらず深煎りをリクエストされることもある。京都に深く根ざしたコーヒー文化は、一朝一夕には変わらない。大会に名を連ねるロースターの焙煎法も様々だ。しかし自分の思うようにやっていく、妥協はしない。京都基準でも、大会基準でもなく、自分は世界基準でやっていく。そう言い切る金子さんは、今や京都以外にも、東京、福井、静岡、大阪など50を超える卸先を持つ。2014年には、Fulgenの小島氏との出会いからTim Wendelboe氏を招いてイベント開催も実現、参加者は100人を超えた。


京都の喫茶文化は世代交代の時期を迎えている。しかし、昔ながらの喫茶文化を否定するつもりはないという。お互いに、それぞれ価値のある事をやっていると考えている。
一方、新世代のコーヒー文化が急成長する中、顧客とのコミュニケーション、バリスタの地位や労働環境など、新しい時代の波には課題も多いと感じている。現状を冷静に見つめる目も忘れない姿勢には、伝統を変化させ、思いを貫いてきた金子さんだからこその深く成熟した想いが感じられた。


今でも自ら週6回焙煎し、スタンドに立ち、行ける範囲には自転車で配達を行っている。大きな袋を積んで京都の町を駆け抜ける金子さんの姿をよく見かけるのは、そういうことだったのだ。「自営業は体が資本ですから、健康には気を付けています」と朗らかに笑う金子さん。穏やかな語り口の向こう側に、努力と情熱がキラリと光って見えた。

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