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なぜゆっくり注ぐのか 〜翻訳シリーズ6〜

なぜゆっくり注ぐのか 〜翻訳シリーズ6〜

皆さまこんにちは、KiguのNaruoです。


FELLOWブログの翻訳シリーズ、第6弾。

彼らが随時更新している興味深いブログをもっとみなさまに知って欲しくて、翻訳しています。


今回のテーマは「Why Is The Slow Pour Important?」

直訳すると、「なぜゆっくり注ぐことが重要なのか」。カフェのバリスタがコーヒーを作るときに、なんで一気にお湯を注がずに、ゆっくり丁寧に注いでいるのかがなんとなく分かる記事です。毎度おなじみ、マインドフルネス的諭し方もしています。

またおうちでコーヒーを淹れる方にも、わかっているようでわかっていないコーヒーが溶け出すメカニズムが、少し紐解ける内容です。

長文ですが読み応えはありますよ。


原文はこちら

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2020年3月26日

ハンドドリップが、毎日のコーヒー習慣として定着している方もいらっしゃるでしょう。しかし一方で、「面倒くさい」「複雑すぎる」「時間がかかりすぎる」という印象を持つ人もいるでしょう。

後者の方にはお伝えしたい。

わかります、誰にでもできることではありませんよね。でも、ちょっとだけお付き合いください。これから家でコーヒーを淹れる時間が増えていく中で、特に重要な秘訣をお伝えしたいと思います。


忙しい1日に、もう1つ作業や家事を追加するという意味合いではなく、丁寧にゆっくりお湯を注ぐ2~3分を、自分への毎日の小さな贈り物と見立ててみてはどうでしょうか?

私たちは皆、生活の中でセルフケアのための儀式を毎日何かしらの形でしており、そのための時間を作っています。スキンケア、朝のストレッチ、植物への水やりなどです。そこにプラスして、錬金術のように一日の疲れを癒す良い酒(コーヒー)を淹れてみましょう。

なぜゆっくりとお湯を注ぐのか、そのヒントと手順をご紹介します。

おうちハンドドリップのすすめ

味の決め手となる2つの要因

時間の長さ挽き目です。私たちは常にこの2つのバランスを取りながら、最適な抽出(つまり最高の味)を目指しています。

時間の長さ

水がコーヒー豆と接触している時間が長いほど、(ある程度)風味を抽出することができます。当たり前の簡単なことのように聞こえますが、そうではありません。この方程式に挽き目が加わると、話はもっと複雑になります。

挽き目

コーヒーの表面積が大きいほど、水との接触面積が大きくなり、より多くの味やフレーバーを抽出することができます。粗い挽き目は、水が豆に浸透しコーヒーのすべての成分を引き出すのに時間がかかるため、抽出に時間がかかります。一方、挽き目が細かいと、コーヒーに含まれる成分をより多く取り出せるので抽出が早くなりますが、その分苦味や渋味を出す可能性は高くなります。

粗い挽き目→抽出が遅いが、ネガティブな味が出にくい

細かい挽き目→抽出が早いが、ネガティブな味が出てきやすい

そもそもコーヒーはどのように溶け出すのか

コーヒーの抽出とは、溶質(コーヒーの成分)が溶媒(水)に溶け込むという化学的な相互作用です。

高校の化学の授業で習うかもしれませんが、物質には、溶けるのに時間がかかる化合物とそうでないものがあります。

そう!コーヒーはその挽いた粉の中に、溶けやすい化合物と溶けにくい化合物が詰まっているのです。軽い、フルーティーな風味(果実酸や有機塩)は先に溶けます。ナッツ、キャラメル、チョコレートのようなフレーバー(焙煎中の砂糖のキャラメリゼによる)や、有機物(セルロース)から得られる木、モルト、灰のフレーバーは、挽いたものから抽出しにくいのです。



挽き目の調整は、これらの化合物にアクセスしやすくし、結果それらのフレーバーに到達するのに役立ちます。

また、時間の長さをかけることで、これらの化合物をすべて水に含ませることができます。

そしてもちろん、挽き目時間の長さはバランスが大切です。

何故、細かい挽き目で速く注いではだめなのか

ここまで読み進めると、「すごく細かく挽いて、早く注いでしまえば 、すぐコーヒーが完成していいじゃないか!」と思うかもしれません。

しかしそうではありません。コーヒーの挽き目が細かいほど表面積は大きくなるため、抽出を高速で均一にする必要があります。

高速で抽出しなければ、本当は出したくない苦味や雑味、渋味やドライテイストなどが時間と共に抽出されます。

またもし高速であったとしても、均一にお湯が行き渡らなければ、一部分では過抽出、その他の部分では未抽出が起こり、味に悪影響を及ぼします。細かい挽き目のコーヒー豆は、お湯を表面で弾くこともあり、それらの要因を早く注ぐ力(重力)だけでコントロールすることはとても難しいんです。

もし細かい挽き目のコーヒーを使うのであれば、エスプレッソマシンのように重力だけではなく強い圧力でお湯を押し出し、速く均一に抽出することが求められます。このことか分かるように、エスプレッソマシーンは、極細の挽き豆から美味しいところだけを短い時間で抜き取るような作業をしているのです。

ハンドドリップ(手動)でエスプレッソマシーン等(電動)と同じく、圧力をかけながら高速で均一に抽出することは不可能です。

つまり人間が手で淹れるスタイルには、それに見合った挽き目と時間の長さがあるということです。

ハンドドリップはどのように淹れるのか

ハンドドリップの場合、挽き目は中挽きの範囲(中細、中、中粗)にして、時間をかけて注ぎましょう。苦いコーヒーを避けるために、細かい挽き目は使用しません。早く抽出したいからといって細かい挽き目にしてしまうと、まずいコーヒーになります。

Stagg EKGのようなケトルは、淹れる時間でタンゴを踊るようにゆっくりと抽出するための完璧なツールです。グースネックの注ぎ口は狙ったところに注げる正確性を作り出し、あえて重みのあるハンドルはバランスを取りやすく、プロセス全体をコントロールすることができます。

「大切 or 退屈な作業と思われるかもしれませんが、そのコントロールはとても魅力的です。マジックで書いていたのに、製図用ペンを手にしたようなものですから」- ニューヨーク・タイムズより。

ここまで要約すると

ハンドドリップコーヒーでゆっくりお湯を注ぐ理由:

渋味や苦味がすぐに溶け出さない中挽きのコーヒー豆から、美味しいフレーバーを引き出すためにゆっくり全体に均一にお湯をかけ、マイナスな味を出さずに美味しいところだけを出すため。

というわけで、ハンドドリップについてはもうお分かりですね。

簡単なレシピ

さてみなさん。明日の朝、ちょっとだけお時間ありますか?Stagg ドリッパーとケトルでぜひ試してほしいレシピをご紹介します。

1. ケトルにお湯をたっぷり入れて、90度から95度に加熱します。

2. 350mlのお湯に対して、24gのコーヒー豆を中挽きで用意します。

3. ペーパーをドリッパーにセットします。その中にしっかりとお湯をかけて、紙を濡らしつつ、ドリッパーを温めます。次に、カップに溜まっているお湯を捨ててから、ドリッパー内に挽いたコーヒーを投入し、軽く揺すって、表面を平らにします。

4. 中心から円を書くように注ぎ始め、外側まで円を伸ばします。50gもしくは、コーヒー粉の2倍のお湯をまずは注ぎ、30秒蒸らしてください。

5. 蒸らしを終えたら、中心から外側に注ぐ工程を数回繰り返します。全体で、2:30から3:00で抽出を終えるようにしましょう。

6. 美味しいコーヒーの完成です!

ハンドドリップには、感覚的に優れた利点がたくさんあります。そのコーヒーは一般的によりクリーンな口当たりと複雑な風味を持ち、またより自由に味わいをコントロールできます(電子レンジではなく、コンロで調理するのと同じです)。

しかし、それだけではなく、おそらく人生において必要になる立ち止まる時間とマインドフルネスを得ることができるのです。


*注ぐ時間や挽き目の大きさについて、もっと深く知りたいですか?この記事はBarista Hustleを参考にしています。

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今回はかなり込み入ったトピックスでした。

日本語にするだけでは理解しにくい点も多く、加筆修正点が沢山ありました。

このトピックには反しますが、最近様々なおうちコーヒー器具がある中で、一概にゆっくり注ぐことだけが良いとは限りません。

極細挽きのコーヒーを入れて一気に上からお湯を注ぐドリッパーや、浸漬式と透過式を組み合わせたようなドリッパーもあります。それらは注ぎ方にこだわらずとも美味しいコーヒーを作れるようにしたいという着眼点から始まっているんだろうと思います。注ぎ方で変わってしまう味の変数を減らそうとしているんですよね。

でも私は、このブログが言っているようにゆっくり注ぐ時間を大切にしたい。

そして注ぎ方で変わる味の変化を楽しみたい。いつも行くカフェで、その日のバリスタによって味が変わることは、私はむしろ迎合するタイプです。

ちょっと人間らしさがあるからハンドドリップは面白くて、楽しいんです。

美味しいコーヒーを作るコツは沢山ありますが、自分にとって一番美味しいコーヒーなんて時と場合で全然変わるもの。

誰にでも美味しくではなく、自分にとって美味しいコーヒーがあれば、もう幸せですね。

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