View all posts

静かな時間、ページをめくりながらあえてホットコーヒーを

静かな時間、ページをめくりながらあえてホットコーヒーを

暑い夏にはひんやりしたアイスコーヒーを楽しむのが定番。一方で、冷たい喉越しだけを味わうにはもったいない豆もあります。

むしろ、今あえて「よろしければ、ホットで楽しむのはいかがでしょうか?」と提案したいコーヒーもあるんです。

「ブラジル マルシアーノ・トマチニ」は、まさにそんな一杯です。


ブラジル マルシアーノ・トマチニ

  • 焙煎度:浅煎り
  • プロセス:Pulped Natural
  • 品種: Catucai 785
  • カップコメント:花やかな香り、みかんやプラム、ブラックカラントの味わい、ヘーゼルナッツのような甘みとそれに伴う余韻。

コーヒーは温度によって味わいが変化し、さまざまなレイヤーが浮かび上がるような美味しさを持っています。バリスタの間では、こうしたコーヒーを「じわじわ系」と呼ぶことがありますが、これに、さらにジューシーさが加わり「ジュワジュワ系」とでも表現したくなります。カテゴリーをつくりたい訳ではなく、こんなふうにオノマトペを使うことで、感覚的な美味しさを一人でも多くの方と分け合いたいのです。

変わりゆくブラジルらしさ

このコーヒーの魅力は、何といってもそのブラジルらしからぬ活き活きとした酸味にあると思います。昨年、旨みが穏やかに浮かび上がる見事なグラデーションに感動した経験があり、今年もとても期待していましたが、その期待をしっかりと超えるものがやってきました。今年も昨年と同じ品種とプロセスで作られた豆ですが、飲んだときの印象は、ケニアやルワンダのような力強いジューシーな果実感に溢れていました。今後も地球の反対側から、このコーヒーを見守りたいですし、インポーターのSYU・HA・RIさんには感謝を伝えたいです。

一般的に「ブラジルらしい」コーヒーというと、アーモンドのようなナッティな甘さをベースに、後からストーンフルーツ系の優しい酸味が特徴的です。どちらかといえばマイルドで無難な味わいをイメージする方が多いのではないでしょうか。

しかし、ブラジルの「今」はここまで進化していると言うべきでしょうか、それとも、代々積み重ねてきた努力により、ブラジルの可能性が「今」発見されたと言うべきでしょうか。マルシアーノ・トマチニのようなコーヒーに出会うと「ブラジルらしさって本当にあるのだろうか?」と感じ、ブラジルの可能性をもっと深掘りしたくなります。

マルシアーノの家族の話

マルシアーノとその家族は、25年以上にわたりコーヒーを生産してきましたが、ここ5年でその品質が劇的に向上しました。かつては大量生産に重きを置いていた彼らですが、時代の変化と共に、品質向上の必要性に気付きました。兄弟で土地を共有するようになったことで、マルシアーノは妻のジョジアーヌと共に、コーヒーの品質にさらに時間をかける決断をしました。2006年からは、スペシャルティコーヒーの生産に力を入れ、新しい品種Catucai785を導入し、パルピングマシンの購入などの投資を行い、今日では地域のコンテストでも良い結果を出し続けています。

マルシアーノの農園が位置するエスピリトサント東海岸近くのエリアで、ブラジルの中でも特に標高が高く、過酷な自然環境です。限られた農地で、熟練した農家さんが手摘みで選別した豆は、まさに作り手の味が味わえるマイクロロット。カトゥカイとイカツ785の自然交配から生まれた品種のCatucai785は、エスピリトサントに最もフィットしているとされ、その可能性を最大限に引き出しています。

削ぎ落として磨きたい素材の味

特徴的なテロワールを持つこのマルシアーノの豆だからこそ、焙煎で味を大きく調整するのではなく、素材そのものの良さを正直に伝えたいと思っています。そういう意味では、比較的シンプルで素直な豆だと感じています。

最近では、作り手がどのような意図でこの生豆の味を作り出しているのかを考えることが増えていますが、マルシアーノの場合、少しでもディベロップメント(※)をしすぎるとナッティな印象が強く出てしまい、逆にディベロップメントが足りないと薄っぺらい印象になってしまいます。必要な要素だけを残し、あとは削ぎ落として丸みを出す。そんな感覚で焙煎に取り組んでいます。

ディベロップメントは、コーヒーの焙煎の後半の段階。焙煎前半で水分を失った生豆に、複雑な化学反応が起こり味わいに影響します。一般的に、ディベロップメントフェーズを長く取ると、コーヒーのボディが増し、酸が分解され甘さが際立ちます。逆に短いとシャープな酸の印象になります。


Kurasuの焙煎チームもバリスタも、いつか全員でエスピリトサントに訪れてみたいですね。そのテロワールを生身で体感したい。そして、産地のリアルな情景とともに再びみなさんにこのコーヒーを紹介し続けたいです。

じっくりと味わい ゆっくりと流れる

最近は異例の暑さが続き、部屋のクーラーが効きすぎることも多くて、「暑い!」「寒い!」と感覚が単純になりがちですよね。でも、少し早起きして外に出てみたり、夕方に鴨川を散策したりすると、季節の変わり目を感じさせる風や、空の色の変化に気づくことがあります。

ぜひ、そんなときにマルシアーノを楽しんでみてください。焦っているときではなく、少し心に余裕があるときに飲むのがぴったりです。マルシアーノをきっかけに、少しペースを落としてみるのもいいかもしれませんね。温度が変わることで味わいも変化するので、読書しながら時々飲むのもおすすめです。

ペアリングするなら、まんじゅうのような和菓子と合わせるのもいいかもしれません!もちろん、ホットのまま、単体でも楽しめます。じわじわっと、じゅわじゅわっと広がる余韻を感じながら、心を癒してください。

View all posts

Leave a comment

All comments are moderated before being published.

This site is protected by hCaptcha and the hCaptcha Privacy Policy and Terms of Service apply.

Reading next

蜂蜜レモンを思わせる、特別なエスプレッソ。Kyoto Stand8周年記念ドリンク『プレミアムエスプレッソトニック』とは?
Seven Years Coffee(東京)2024年8月Kurasuパートナーロースター