次にご紹介する#クラスパートナーロースターは、東京・蔵前のLEAVES COFFEE ROASTERS。オーナーの石井さんがビンテージのプロバットで焙煎するコーヒーは、オープンからわずか半年という短い期間でBrutusのコーヒー特集にフィーチャーされ、卸先も東京だけでなく南は鹿児島までと多岐にわたるなど、早くも多くの注目を得ている。
実は高校生の頃、プロボクサーとして活躍していたという石井さん。人気ロースターをオープンするに至るまでの道のりと、今後の展望について伺った。
LEAVES COFFEE ROASTERSができるまで
19歳の頃、プロボクサーとしての活動を終え、人生の転換期を迎えた石井さん。以前から頭の片隅にあった、「将来は飲食店を経営したい」という夢を追う事に決め、舵を大きく切った。ラーメン屋、ハンバーガー屋、焼き鳥屋など、様々なジャンルの店で経験を積み、厨房や接客などのソフト面を一通り体験した。
「大切にしている考え方の一つに、”夢と需要と供給のバランス”というものがあって、それが取れていなくてもやもやとしていた時期でした」と石井さんは当時を振り返る。やりたい事があって、しかし結果がまだ追いついていない、そんな状況に焦りを感じていた。
「自分で体験したことしか信じられない性格」だという石井さん。それだけに、夢をかなえるためにやるべき事、見るべきものがまだたくさんあった。次の一歩として、飲食店の内装や外装について学ぶ事にした石井さんは、建築業界に飛び込む。才能を開花させ成功した石井さんは、わずか1年半ほどで、5人の同志と共に独立するまでに成長した。その後5年ほど、建設会社を経営しながら夜は飲食店でのアルバイトをこなし、現場を生きた経営学の教材として、マネジメント能力を磨いた。
そんな石井さんのスペシャルティコーヒーとの出会いは、ある時、お土産でもらったエチオピアの浅煎りだ。「自分が今まで飲んでいたコーヒーの概念を覆されました。フレーバーにもストロベリー、フルーティー、とあって、それまでコーヒーと結び付けて考えたことがなかった。それでこのコーヒーの事をもっと知りたい、と思うようになって、気が付いたら自分でも家で淹れるようになっていたんです」と、石井さんはその衝撃を語る。コーヒーの抽出方法など、科学的根拠まで独学で勉強するほどのめり込み、次第に石井さんの中で「いつかコーヒーを仕事にしたい」という想いが芽生え始めた。
しかしそこでいきなりカフェ経営に飛び込まないのが石井さんの堅実なところだ。まずはコーヒーだけでなくレストランとして店を開け、人気バルへ成長させた。そこからは1年半おきのペースで1店舗ずつビジネスを拡大し、3店舗目のダイナーには本格的なエスプレッソマシンを導入し、ハンドドリップも提供するなど少しずつコーヒーへのこだわりを組み込んでいった。そして4店舗目はコーヒースタンドとしてオープンし、各地のマイクロロースターのコーヒーを紹介するスペシャルティコーヒーショップとした。LEAVES COFFEE ROASTERSの構想が生まれる1年半ほど前の事だ。
自家焙煎という選択
それまで、各店舗で使用するコーヒーは近隣のロースターから仕入れていたが、次第に自分の理想とする味を自由に表現したいという思いが強くなってきたと話す石井さん。確固としたコンテンツを持つブランドを構築したいという想いもあり、自家焙煎所であるLEAVES COFFEE ROASTERSを立ち上げる事になる。
「枯葉が落ちてまた新しい葉が出て、花が咲くように、いい意味で変わっていきながらも、同じ命は続いていて、その根底は変わらない。そんな姿でいたいという想いを込めて、LEAVES COFFEEと名付けました」と石井さんは話す。夢をかなえる事に必要なものは何か、自分に合った進め方は何か、試行錯誤しながら、しっかりと根を下ろして大きく成長する石井さんの姿を映し出すような名前だ。
LEAVES COFFEE ROASTERSのコーヒー
LEAVES COFFEE ROASTERSで提供するコーヒーは、エスプレッソが 2種類 、そしてフィルターコーヒーは5、6種類。さらにその中で、日常的に気軽に飲んで楽しめるスタンダードラインと、ゲシャなどの高級品種を贅沢に楽しめるプレミアムラインとに分かれており、その日の気分で色々な味わいを楽しめるのが魅力だ。
石井さんが愛用する焙煎機は、ビンテージの窯に最新式のバーナーを取り付けたプロバット。石井さんが一番好きだと思える味わいを出してくれる焙煎機なのだという。
「表現したい味わいを探しにオスロやポートランドに行って、何百杯、何千杯とコーヒーを飲みました。色々飲むうちに、自分の目指す味が分かってきて、じゃあそのお店がどんな焙煎機や抽出器具を使ってるんだろう、と確かめると全部プロバットだったんです。さらに結構な割合でオールドプロバットを使っている所が多くて、なぜオールドプロバットなのかと訪ねると、鉄の蓄熱性の高さが今で回っている鉄とは段違いに良いんだと言うんですね。新しいものにはその鉄の粗をコンピューターの制御でコントロールしたりカバーしたりしているんです。もちろん便利になったり良い部分もありますが、自分の目指している味に近い所でオールドプロバットを選びました」、そう石井さんは説明する。
焙煎の基本はギーセンなど様々な焙煎機メーカーを訪問し、様々な機種に触れる事で確立したという石井さん。事前に知識を構築し、それを実践に落とし込む作業の繰り返しに加え、オスロを訪れた際には有名ロースターの焙煎の様子を自分の目で観察し、吸収した。
「はじめは思うように行かない時期もありましたが、頭の中に理想の味がしっかりあったので、それに近づけていく作業自体にそこまでの苦労はありませんでした」と石井さんは振り返る。石井さんが得意とする焙煎は、甘く、フルーティーでクリーンな味わい。大量の熱風を利用して、甘さと香りに重きを置いた、飲みごたえのある浅煎りだ。
これからの歩み
海外展開も視野に入れ、世界的に通用するロースターを目指していると石井さんは話す。国内では新たに観光都市などで店舗を展開を目論むことで、LEAVES COFFEE ROASTERSというブランドをより多くの人々に知ってもらうことが目標だ。また、コーヒーの競技大会に選出できるような技術とスタッフ育成にも取り組んでいる。
今はアメリカ、北欧や日本の商社から仕入れている生豆も、将来的には直接農園と契約を結び、LEAVES COFFEE ROASTERSでしか飲めないようなコーヒーのラインナップを増やしたいと考えている。今年はアフリカと中南米、特にグアテマラとエチオピアを中心に農園訪問も行う予定だ。「夢と需要と供給のバランス」、この基本を胸に、そして自分の目で見て感じたことを大切にする地に足の着いた石井さんの姿勢で、LEAVES COFFEE ROASTERSはこれからも世界の様々な場面で活躍を見せてくれることだろう。
Leave a comment
All comments are moderated before being published.
This site is protected by hCaptcha and the hCaptcha Privacy Policy and Terms of Service apply.