次にご紹介する#クラスパートナーロースターは、富山でスペシャルティコーヒーを気軽に楽しめるお店として人気を博しているhazeru coffee。代表の窪田さんに、これまでの歩みとこれからのお話を伺った。
hazeru coffeeができるまで
石川県出身の窪田さんは、大学卒業後、銀行員として社会人生活をスタートさせた。元々コーヒーが好きだったという窪田さん。仕事帰りにカフェで過ごすのが日々の楽しみだった。コーヒー片手に勉強したり、ほっと一息ついたりーそんな時間を過ごすうちに、こういう空間が職場なら、こんな空間を作る仕事なら、もっと楽しいかもしれない。そんな気持ちが芽生えてきたという。「仕事って自分の人生の半分以上を占めるものですよね。それを考えると、ずっとこのままこの仕事をやり続けるとしたら、それは自分の人生としてどうなんだろう、じゃあ好きな仕事をして過ごしたい、そう思うようになりました」と窪田さんは振り返る。
そんな窪田さんの胸に暖かく残っていたのが、大学時代を過ごした横浜のスターバックスで、初めて飲んだカフェラテの味わいだ。「コーヒーとミルクがマッチして、ラテってこんなに美味しいんだ、そう思いました。」当時窪田さんが勤務していた金沢市を含め、北陸にはまだスターバックスが進出していなかった頃、その感動はいまだ鮮やかに思い出された。カフェに通いながら、自分の人生をどう進めるか、そう考えれば考えるほど、コーヒーを仕事にしたい、その想いはどんどん強くなる一方だったという。スターバックスジャパンに連絡を取り、ちょうど北陸に店舗をオープンすると聞かされた時には、窪田さんの心はすでに決まっていた。
2002年、社員採用試験に見事合格し、晴れてスターバックスジャパンの一員となった窪田さん。風通しの良い社風の中、順調にキャリアを積んだ窪田さんはその後15年間スターバックスで勤務し、店長職を任されるまでに成長した。大好きなコーヒーについて学びながら、更にコーヒーを通じた人々のつながりやその空間を提供できる。その喜びにすっかり魅了された窪田さんだが、コーヒーへの愛が強まれば強まるほど、ある想いが募ってきたという。
「自分のやりたい事とスターバックスの方向性は一緒でした。ただ、事業の性質上、コーヒーにフォーカスするというよりも、コーヒーを中心としたカフェというビジネスモデルになる。さらにチェーン店なので、こだわりの一杯を淹れて出す、というよりは、誰が入れてもきちんと決まったレベルで美味しいものを出す事がどうしても優先になってしまう。そんな中で、こうすればどうだろう、こうしてみればもっと美味しくなるかもな、という想いやアイデアがどんどん膨らんできたんです」と、窪田さんは心境の変化を振り返る。
さらに転勤を重ね、震災を経験し、ライフステージにも変化が生まれたことで、働き方や家族と過ごす時間など、自分の生き方や仕事の在り方についてもう一度見つめなおすきっかけを得た窪田さん。一念発起して、自分の店を持つことになる。hazeru coffeeが芽を出した瞬間だ。
hazeru coffee のコンセプト
「一口にスペシャルティコーヒーと言っても、どんどん新しい製法や品種が出てくるようになりました。そういったものも含めて、スペシャルティコーヒーを気軽に楽しめるような、高品質なもの、最先端のものを楽しめる店を作りたい。そう考えて、2016年にhazeru coffeeを立ち上げました」、そう窪田さんは話す。インスピレーションは兵庫県のTAOCA COFFEEや神奈川の27 Coffee Roastersから。クリーンなインテリア、豆売りに力を入れ、幅広い嗜好に対応できる焙煎度合いのバリエーションなど、言われてみれば共通点が見えてくる。
缶コーヒーや昔ながらのコーヒーを愛好する人の数はとても多いという富山だが、スペシャルティコーヒーとなるとオープンから2年になる今もまだまだ浸透していないと感じているという。地域にカフェや焙煎所はあるものの、気軽に立ち寄ってはバリスタやスタッフとコーヒーの事や日常会話を楽しむような空間はまだ少ないと窪田さんは説明する。「スペシャルティコーヒーって、本来ならストーリーがたくさんあるもの。そこに関するコミュニケーションをもっと取っていくことができれば、大きく広がるものがあると思うんです」と窪田さんは言う。
hazeru coffeeでは常時試飲を提供し、そのコーヒーのストーリーや味わいについて聴いてもらう。酸味のないものを、と注文を受ける事も多いが、試しにと飲んでもらった浅煎りを気に入ってもらえることもしばしばだ。
品質も値段も高いスペシャルティコーヒーの専門店を開くにあたり、最初は少し考えすぎていたことがあると窪田さんは振り返る。食に関心が高いが美味しいコーヒーにはまだ出会っていない、そんな層を想定し、精肉店、ベーカリー、和菓子屋などこだわりを持つ店が集まるエリアに出店したのもそのためだ。しかし今では少し考え方が変わり、何気なく立ち寄った色々な嗜好を持つ人々が、ここで飲んだコーヒーが美味しかった、もっと知りたい、そう思ってもらえるような店になっていきたい、と考えている。
hazeru coffeeの焙煎
窪田さんが愛用している焙煎機はフジローヤルの5㎏窯をカスタマイズしたもの。
オープンを控え、石川県でコーヒー屋を営む友人に焙煎を教えてもらい、東京にもセミナーのため足しげく通った。
提供する焙煎度合いは浅煎りから中深煎りまでの7種類。オープン当時から変わらない幅広さには、様々な嗜好に対応しながらも、普段は深煎りばかりという人にも浅煎りや中煎りで出てくるような風味の豊かさをもっと知ってもらえたら、そんな思いも込めている。
甘味をしっかり出しながらいかにフレーバーを豊かに出していくか―それが当初からのhazeru coffeeの焙煎のコンセプトだ。それに合わせてマシンを細かく調節し、さらに焙煎前と焙煎後に手作業での選別を行うことで品質を高く、一定に保っている。
前述のセミナーだけにとどまらず、時には焙煎合宿などにも参加し、常にアンテナをはり情報収集を欠かさない窪田さん。焙煎合宿では、普段と違う環境で焙煎を行う事で、メーカーによる焙煎機の個性の違いや、一つの成功体験がすべてに通用するわけではないことなどを学び、参加するたびに創造性や柔軟性が培われるのだという。
「スターバックスという大きい組織にいたころは、業界の中での横のつながりを作る機会はあまりありませんでした。今はそれができるのが単純に楽しいし、他のロースターと関わる事で自分のコーヒーとの向き合い方に非常にいい刺激をもらっています」、と窪田さんは話してくれた。
これからの道のり
オープンから2年が経ったが、スペシャルティコーヒーの良さを知ってもらえる、気軽に立ち寄れる店でありたいという気持ちは変わらない。敷居の高さを感じさせず、美味しいと思ってよく聞いてみたらスペシャルティコーヒーだった―そんな出会いを提供していきたいと考えているのだ。
「今後の道のり。地道ではありますが、日々の営業や、定期的にやっているコーヒー教室をこれからも続けていくこと、あとは外に出てイベントなどを積極的に開催し、新しい人々と出会うことでしょうか」と窪田さんは話す。
更に立ち寄りやすい店を目指し、富山の中心街に2号店を出すことも視野に入れているというhazeru coffee。これからも、日本のスペシャルティコーヒー文化を広め、より多くの人々への懸け橋となる存在として輝き続ける事だろう。
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