今月のKurasuパートナロースターは、岡山県にあるONSAYA COFFEE。2008年に一号店をオープンし、今年で15年目を迎える地域に深く根付いたコーヒー屋さんです。
実は一度、お店に伺いオーナーの東さんにお会いしました。カウンター越しで丁寧に淹れてくれたコーヒーはとてもおいしく。しかし、私にとってONSAYAでのコーヒー体験は単なる飲み物としての意味を超えています。何か大人になるにつれて失われていた時を取り戻した感覚に陥ったのです。ロマンと言ってしまえばわかりやすいが、あえて簡単に言い切って適当にまとめたくはない反骨精神を久しぶりに発揮。一言では言い表せないONSAYA COFFEEの魅力に迫ります。
ONSAYAという名前の由来は、Richard Groove Holmesの "Onsaya Joy" というソウルジャズ曲から由来している。"Onsaya"の"ya"の音が何々屋(や)を連想させ、日本らしい雰囲気を漂わせます。そこに「音」と「茶」を組み合わせて、「音茶屋」という他にはないユニークな名前に巡り合った。「良い音楽が旅を誘い、コーヒーが人をつなぐ、そうした穏やかな日常を届けたい」という想いを込めたと話すオーナーの東さん。
そんな東さんは紆余曲折な人生を過ごしてきた。高校を中退し、一度、様々な仕事を経験して、大学に入り直す。しかし、その中でも変わらず心に残っていた、コーヒーの記憶。母親が好きだったコーヒー、そして父親が連れていく喫茶店。若い頃の東さんにとって、コーヒーと喫茶店は憧れの対象だった。一度、レールから外れた人生、思い切ってやりたいことを形にすると決め、大学卒業後はすぐに起業を。
周りの力も借りながら、ゼロから作り始める喫茶店。「その時の全財産は10万円しかなくて、日銭暮らしをしていた」と笑いながら当時の状況を振り返る。しかし、やり続けていくうちに常連さんも増えてきた。そのうち焙煎も自らの力ではじめ、生産地へも訪れるようになった。気がつけば、世間ではスペシャルティコーヒーという概念が広がり、全盛を迎えたようだが、ONSAYA COFFEEはどこかスペシャルティという概念が先行しないような印象を受ける。
最後に、お店にはコーヒーにまつわる話のタネがたくさん蒔かれている。だからか、不思議なことにONSAYAではコーヒーの先の景色が見える。コーヒーを飲む場所の文化、デザイン、歴史、それにまつわる様々な社会問題、これらの要素を含むコーヒーカルチャーのすべて。きっとONSAYA に訪れてみるとわかるだろう。コーヒーカルチャー的なことを想像しながら、物寂しげに流れるブルースを楽しむ優雅な時間を過ごしてほしいのです。
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