記事一覧を見る

Q.O.L. COFFEE (名古屋):2019年4月 #クラスパートナーロースター

Q.O.L. COFFEE (名古屋):2019年4月 #クラスパートナーロースター

次にご紹介する#クラスパートナーロースターは、名古屋のQ.O.L. COFFEE。

大通り沿い、目の覚めるような青の外壁が印象的な店舗は、大きな窓からたっぷりと日の光が入る明るい空間だ。2階席もある店舗の広さを活かし、演劇や音楽ライブなどのイベントにもスペースを提供している。Quality of Lifeの頭文字をとって名付けられたこのカフェは、その名の通り、人々の生活の質を高めるような体験・空間を提供することをコンセプトとした、名古屋の押しも押されもせぬ人気店だ。オーナーの嶋さんに、お話を伺った。

コーヒーとの歩み

名古屋といえば、「モーニング」。名古屋で育った嶋さんも、その文化に親しみながら育った。「両親によく喫茶店に連れていってもらっていました。喫茶店という空間が好きで、ミルク入りのコーヒーを飲んでいたのを覚えています。小学生の頃ぐらいには、自分もそんな空間が作れるようになりたい、と思うようになっていました」、そう嶋さんは振り返る。

中学、高校とバスケットボールに熱中した後、高校を卒業した嶋さんの胸の中には、小学生の頃の憧れがいまだに息づいていた。飲食店を経営したい、その夢を実現させるため、調理師専門学校に進学。22歳の頃、本格的にコーヒーの勉強をすべく、名古屋でコーヒーを取り扱う会社に就職する。そこでスペシャルティーコーヒーに出会い、日本でまだサードウェーブが主流になる前から、スペシャルティーコーヒーの美味しさ、質の高さに触れる機会を得た。

その後9年ほどコーヒー業界で経験を積み、ハンドドリップ、エスプレッソや焙煎まで幅広い技術を身につけた。そのうちに、世界のコーヒーをみたい、そんな気持ちが芽生えてきたのだと嶋さんは話す。「なぜコーヒーが盛り上がっているのか、外国のコーヒーの文化はどんなものなのか、それが知りたかったんです。アメリカのコーヒーシーンはすでにピークを迎えているように感じて、今まさに盛り上がりを見せているメルボルンに興味を持ちました」、そう嶋さんは説明する。なぜ人々はコーヒーを飲むのか、人々の生活にとってコーヒーはどのような位置付けなのかー実際にローカルな視点に触れ、自分の目でみなければつかむ事のできない感覚。それを手に入れるべく、嶋さんは半年間メルボルンに滞在し、バリスタとして働いた。技術も情熱も、いつ自分よりも優れた才能が現れるかしれない、競争の激しい世界。そんな厳しさも身を以て体験し、日本ではあまり意識する事のなかった、働く事の意味や、働き方についても考える機会になったという。

「自分の目指すものがすでに出来上がり、進んでいっている場所を見る事で、今自分が歩いて行こうとしている方向が合っているかどうか、確かめたかったという思いがありました。メルボルンでの経験を通して、自分の中に合った将来へのイメージを現実とすり合わせ、徐々に形にしていけたと思います」と嶋さんは振り返る。

クオリティ・オブ・ライフを提案する空間

メルボルンから帰国し、日本でもバリスタやカフェが飽和状態になっているのを目にした嶋さん。他とは違う味を出さなければいけない、そう感じた。

「カフェには、色んな文化を発信する場という側面もあります。ここはカフェであり、ロースターであり、ギャラリーであり、例えばアーティストが世に出たり、人の目に触れる場であったりもします。もちろん、そういう特別な機会でなくても、ただ何となく訪れた人が、誰でも何かを感じられるような空間にしたいな、と思っています」と、嶋さんは話す。 絶えず人を飽きさせない場所ー様々な展示やイベントを行い、感性が動く場を作る事で、訪れる人々の生活の質を高める、それが嶋さんが作り上げる空間の目指すところだ。

名古屋のコーヒー文化

名古屋に店をオープンしてもうすぐ2年が経つ。地域では、コーヒーといえば深煎り、という文化がまだ根強いと感じる。正直、スペシャルティーコーヒー文化の盛り上がりにはまだ欠ける部分があるというのが嶋さんの意見だ。店にも、深煎りを求めて来店する人が多いという。深煎りを否定するつもりはないし、それぞれに違うコーヒーの楽しみ方で自由に楽しんでほしい。だがまずは根気よく、自分の店でどういったコーヒーを取り扱っているかを説明し、提供することを続けるうちに、少しずつポジティブな反応が返ってくるようになったのだと嶋さんは言う。「こんなにスッキリして飲みやすいコーヒーは初めて、と言ってくださる方も増えてきました。深煎りをずっと愛飲されてきたご年配の方々にも、新しい味を知って楽しみにしてくれている方が増えてきました。これからこうやってどんどん増えていくんだろうな、と思っています」と、嶋さんは微笑む。

Q.O.L. COFFEEの焙煎

Q.O.L. COFFEEで使用しているのはラッキーコーヒーマシンの焙煎機。やや仕様をカスタマイズした、4kg窯の半熱風式だ。フジローヤルやローリングスマートロースターなど、色々なマシンを使ってきた中でも、十分に自分の出したい味が出せると感じられる頼れる相棒なのだと言う。

豆本来の味を活かした焙煎で、深煎り、浅煎りとカテゴリに分けるというよりも、その豆の味わいの一番いいところを引き出せるポイントを探し出す方式だ。まずは嶋さんが焙煎し、スタッフ全員で飲んでみてはディスカッションを行い、最後の微調整はまた嶋さんが行う。

豆は常時7種類ほどのシングルオリジンを取り揃えている。それぞれ、キャラクターがはっきりと異なるものを選び、様々に違う味わいを体験する楽しみ方を提案している。

ドリンクはKINTOのドリッパーを使ったハンドドリップか、エアロプレスを選ぶことができる。これも豆による味わいの違い、また抽出方法による違いを様々な角度から紹介できる仕組みだ。

新世代の名古屋へ

「コーヒーがある場所からコミュニティを広げたい」、それが嶋さんの目指す形だ。この街だからできることを、そしてそれを通して様々な人々が関わり合えるような場所を作りたい。コーヒーを通して、また、カフェという空間を介して、人々の生活を豊かにしていきたいー名古屋で長年愛されてきた喫茶文化を、新しい形で提案する、そんな嶋さんの模索する道は、これからの名古屋にとって欠かせないものとなるだろう。

記事一覧を見る

コメントを書く

全てのコメントは、掲載前にモデレートされます。名前はコメントと共に公開されますのでニックネームをご入力ください。メールアドレスは公開されません。

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

前後の記事を読む

Craftsman Coffee Roasters (山口):2019年3月 #クラスパートナーロースター
Cafe FUJINUMA(栃木):2019年5月 #クラスパートナーロースター