KurasuヘッドロースターのTakuyaが、タイ北部のコーヒー産地を訪ねました。
今回の動画では、Kurasu BangkokのAum、Kurasu SingaporeのロースターXavierとともに、チェンマイとラムパーンの山あいにあるコーヒー農園「Phupha Estate」を訪問します。
タイは、アジアの中でも今注目されているコーヒー生産国のひとつです。スペシャルティコーヒーの生産国としてはまだ歴史が長い国ではありませんが、2023年にはCup of Excellenceも始まり、年々国全体でコーヒーの品質が高まっています。
タイ北部・チェンマイの山あいへ
チェンマイ市街から車で約1時間半。チェンマイとラムパーンの山あいにあるPhupha Estateに到着しました。
Phupha Estateは、標高約1,300mに位置する家族経営のコーヒー農園です。農地は約13ヘクタルあり、Catuai、Caturra、Bourbon、Yellow Bourbon、Typicaなどの品種が栽培されています。
農園を営むAnnさんのご家族は、約40年前からこの地で農園を続けています。もともとは茶葉を生産していたそうですが、蒸したり冷やしたりする工程がこの場所では安定しづらかったことから、コーヒーの生産へと切り替えたそうです。
Kurasu Bangkokとのダイレクトトレード
Phupha Estateは、Kurasu Bangkokのスタッフの友人の家族が営む農園で、2025年からKurasu Bangkokとダイレクトトレードで取引をしています。
今回の訪問は、単にコーヒーが育つ場所を見るだけではなく、その背景にある人、環境、工程、そしてコーヒーに込められた想いを知るための時間でもありました。
完熟チェリーの収穫
Phupha Estateの収穫期は12月から2月。私たちが訪れた時期は、ちょうど完熟したコーヒーチェリーがたくさん実をつけていました。
農園は急斜面にあり、収穫には技術と体力が必要です。ピッカーの方々は、チェリーの色を見ながら完熟したものだけを見分け、ひとつずつ手摘みしていきます。
1人のピッカーが1日に収穫するチェリーの量は、約45kgから100kg。昨年は約2トン、今年は約2.5トンの生豆生産を見込んでいるそうです。
チェリーの選別とウォッシュドプロセス
収穫が終わったチェリーは専用の45kg袋に詰められ、約24時間休ませます。翌日、タンクに水を張り、チェリーの洗浄とフローター選別を行います。
密度が十分でないチェリーは水面に浮かんでくるため、網を使って取り除きます。こうして、しっかりと熟し、密度の高いチェリーだけが次の工程へ進みます。
ウォッシュドプロセスでは、選別されたチェリーをパルパーと呼ばれる機械にかけ、果皮を取り除きます。Phupha Estateで使われていたのは、コロンビアのPenagos社のパルパー。水を使わずに果皮を剥くことができるため、ウォッシュドプロセスにおける水の使用量を減らすことができます。
また、取り除かれた果皮は集めて乾燥させ、カスカラとして再利用されています。
ドライファーメンテーション
パルピングされたコーヒーは専用のバケツに移され、水を使わずに約24時間発酵させます。これはドライファーメンテーションと呼ばれる工程です。
Annさんによると、ドライファーメンテーションはコーヒーの酸味の質が向上する傾向があり、反対に水を使うウェットファーメンテーションは、バランスや一貫性が向上する傾向があると考えているそうです。
ドライファーメンテーションでは、pHが約3.8になったタイミングで水洗の工程に移し、発酵を止めます。私たちもpH4.0ほどの段階で味見をさせてもらいましたが、熟した柿のような甘さがあり、とても印象的でした。
ナチュラルプロセスの発酵管理
ナチュラルプロセスでは、発酵を安定して進めるために、乳酸菌、塩、糖を加えた水を張ったタンクの中で発酵を行います。
乳酸菌は発酵の方向性を安定させるため、塩は微生物の増殖速度をコントロールし過発酵を防ぐため、糖は微生物の燃料として発酵に一貫性を持たせるために使われています。
すべてをグラム単位で計量し、適切な温度で添加することで、発酵プロセスに再現性を持たせています。発酵中もタンク内の温度や圧力を確認しながら、丁寧に管理されていました。
乾燥工程と品質管理
発酵と水洗が終わったコーヒーは、乾燥棚へ移されます。
ウォッシュドのコーヒーは、全体で約14日間かけて乾燥させます。最初の4日間は日差しがよく当たる上段に置き、その後は下段へ移して乾燥時間をコントロールします。
チェンマイの山奥では、1日にしっかりと太陽光が当たる時間が2〜3時間ほどしかないため、乾燥には時間をかけて慎重に進める必要があります。
ナチュラルプロセスのコーヒーは、約45日間かけて乾燥されます。イエローブルボンのアナエロビックナチュラルは、乾燥の初めは黄色い状態ですが、水分が抜けていくにつれて徐々に黒く色づいていきます。
一部のロットは、専用の乾燥部屋で機械乾燥も行われています。水分値は朝と夜の1日2回計測され、生豆の水分値が10〜11%まで落ちたら乾燥を終了します。
Phupha Estateで感じたこと
Phupha Estateで特に印象的だったのは、すべての工程がとても丁寧に管理されていたことです。
Annさんを中心にご家族で営まれている農園だからこそ、細かいところにまで手が行き届いていました。使っている機械や資材、コーヒー器具だけでなく、農園内の環境や設備まで清潔に保たれていたことが強く印象に残っています。
滞在中にウォッシュドとハニーのサンプルをいただき、後日カッピングをしました。どちらもクリーンで、酸味は明るく、時間の経過とともに美しいレイヤーを感じる味わいでした。良い意味で、これまで持っていたタイコーヒーのイメージを覆されるようなカップでした。
「コーヒーを飲んでもらえれば、私たちのことが分かる」
夜ご飯のとき、Annさんが話してくれた言葉がとても印象に残っています。
「直接会えなくても、コーヒーを飲んでもらえれば私たちのことが分かる。だからコーヒーを飲んでくれたら、それだけで嬉しい」
その言葉の通り、コーヒーを飲むと、彼女たちの丁寧な手仕事や品質へのこだわりが味わいから伝わってくるように感じました。
コーヒーの背景にあるストーリーは、情報として知るだけではなく、味わいとしても伝わるものなのだと改めて感じます。
こうして出来上がった素晴らしいコーヒーを、今後日本のみなさんに紹介していくのがとても楽しみです。
動画で見る
動画では、Phupha Estateの風景、収穫や精製の様子、Annさんたちの丁寧な仕事をより詳しくご覧いただけます。
今回はタイ産地Vlogの前編。Phupha Estateでの2日間の滞在の後、ナーンという別のエリアの農園にも足を運びました。後編では、ナーンでの訪問の様子をご紹介します。
Kurasuのコーヒーを楽しむ
Kurasuでは、京都のロースタリーで焙煎したスペシャルティコーヒーや、日本のコーヒー器具をオンラインストアでご紹介しています。
また、Kurasuのコーヒー定期便では、Kurasuが焙煎するコーヒーと、日本各地のパートナーロースターのコーヒーを毎月お届けしています。
一杯のコーヒーの背景にある生産地、生産者、焙煎、抽出、そしてストーリーを、ぜひ日々のコーヒー時間とともにお楽しみください。



