帰国前、最終日に伺ったのはAntonio Ticasさんの農園、Finca La Laguna。
農園名にもついているLa Laguna は「湖」という意味です。


以前はKurasuでも取り扱っていたものの、品質の不安定さから現在は取り扱いをしていない農園です。
今回は、「なぜ品質が不安定なのか?」その背景を実際に現地で伺ってきました。

孔雀のいるホテルを出発し、途中でAntonioさんが迎えに来てくれた車に乗り換えて農園へ。とても広く、歴史を感じる農園でした。

住み込みで働く方々の家には釜があり、そこで料理をし、洗濯物を干し…と、日常の生活がすぐそばにあることも印象的でした。
この農園で大きな課題となっているのが、深刻な人手不足です。
向かう途中にもトマト農園が点在していましたが、トマトは年間を通して収穫でき、賃金もコーヒーピッキングより高いため、ピッカーが流れてしまっている状況があります。
その結果、「収穫期に人が集まらない」「施肥や除草など、必要なタイミングでの農園管理ができない」といった問題が起きており、品質の安定にも影響しているとのことでした。
さらにAntonioさん自身も、農園の一部をトマト農家に貸し出して収入を得ているという現状もあり、コーヒー農園としての持続の難しさを感じました。
品種についても興味深い話がありました。
Antonioさんはパカマラの中でも、マラゴジッペ寄りの、ラグビーボールのように先端が少し尖った形のものを選んで栽培しています。
過去に高く評価されていた品種であり、今もその魅力を信じて育て続けているとのことでした。

また現地で聞いた話として、「ヨーロッパでは水を多く使うコーヒーの輸入規制がある」という噂も。
気になって帰国後に調べてみると、ウォッシュドプロセス自体が禁止されているわけではなく、EUの環境規制(EUDR)によるものでした。
「森林破壊されていない土地で生産されていること」、「トレーサビリティ(生産背景の追跡可能性)」などが求められ、特に水の管理設備が整っていない場合、環境負荷の観点から結果的に輸入が難しくなるケースもあるとのこと。
私はウォッシュドプロセスが好きで、お店でコーヒーを選ぶ時も無意識にウォッシュドばかり選んでいました。
もちろんウォッシュドを否定したいわけではありません。適した環境で、適切に管理されて作られた素晴らしいコーヒーもたくさんあります。
ただ、もし様々な状況でコーヒーを作っている小規模農家さんからも豆を購入して関係性を築いていくことに重きを置くのであれば、他のプロセスにも目を向ける必要があるのではないかと感じました。
生産背景まで可能な限り学び、理解した上で選ぶことが、これからの自分たちのコーヒーの届け方にも繋がるのではないかと感じました。
その後、Antonioさんに送っていただき、近くに住むOctavioさんの農園へ。
Octavioさんの農園
Octavioさんは元々カナダで医師をしていた方で、英語も堪能。直接コミュニケーションが取れたのも印象的でした。

Kurasuとしては今季初の買い付け。農園の管理は非常に丁寧で、木と木の間隔がしっかり確保され、ドライ工程でも熟度の選別を徹底、土壌管理も数値ベースで分析、と、これまで訪問した中でもトップレベルの管理体制でした。
Grain Moisture Meterを使用するなど、品質管理への意識の高さが感じられました。
まだキャリアは浅いものの、OctavioさんはすでにCOEで4位入賞経験を持つ実力者。注目のルーキー的存在です。

彼の自宅にも招いていただき、ビールやチーズ、奥様手作りのレモネードをいただきながら交流しました。

その中で印象的だった言葉が、「農園を出たコーヒーは、それ以上良くなることはない。いかに今の状態を保ったまま焙煎されるかが大事」というもの。
生産者として最高の状態を知っているからこその言葉だと感じました。

私たちの元に届くまでに、コーヒーはさまざまな環境を経て品質が変化していきます。
その中で、焙煎や抽出によってできることは限られている。
だからこそ、“悪くしない“ための技術と意識を持つことの重要性を改めて感じました。
その後、本来はAntonio Rene Aguilar Lemusさんの農園にも訪問予定でしたが、時間の都合で断念。
代わりに、娘さんが経営するカフェを訪れ、彼のコーヒーをいただきました。
Antonio Rene Aguilar Lemus
AntonioさんはKurasuでも長年取り扱っている生産者。
2004年以降、COEに継続的に入賞している、安定した品質を持つ農家です。
カフェに立ち寄ってくれたご本人ともお会いすることができ、少しシャイで優しい人柄が印象的でした。
その人柄が、そのままコーヒーに表れているように感じました。





