4日目は朝5時に出発。
首都サンサルバドルから車で約2時間かけて、馴染みのあるチャラテナンゴへ向かいました。
朝食は、初日に訪問した農園が経営しているガソリンスタンド併設のカフェでサルバドルスタイル朝ごはん。
チャラテナンゴという土地
エルサルバドルの多くの地域は火山性土壌ですが、チャラテナンゴだけは周囲に火山がなく、粘土質の土壌を持っています。
さらに、
- 海から遠い
- 雨雲が届く前に消えることが多く、急な雨が少ない
- 雨季にはしっかりと降雨があり
- 年間の平均気温も比較的低い
と、コーヒー栽培にとても適した条件がそろっています。

このエリアはホンジュラス・グアテマラ・エルサルバドルの三国国境付近に位置し、行政機関主催の品評会が行われるほど、近年注目されている地域。
生産者は小規模で、アクセスも良いとは言えず、生産量も多くないため、大手商社がなかなか足を運ばない一方で、クオリティの高さから「発掘された産地」でもあります。
COE(Cup of Excellence)開始以降このエリアからの入賞が増え、ようやく「産地」として地図に載るようになりました。
Finca Santa Rosa 到着!
午前中、ついにラウル・リベラさんの農園「Finca Santa Rosa」に到着。
Kurasuにも過去ワークショップで来てくれたラウルさん。Coyoteの門川くんは、JICA時代にラウルさんの焙煎所で働いていた縁があり、現在もその関係が続いています。
今、Kurasuで扱っているエルサルバドルの豆も、小規模農家さんが多く最終的にはラウルさんの精製所に集まり、コンテナで日本へ輸送されています。
ラウルさんの会社はエキスポーターとしての役割も担っています。

パカマラのチェリー体験
ラウルさんといえばパカマラ。さっそくチェリーを食べてみると、果汁たっぷりでとにかく甘い!サイズも大きく、完全にフルーツ。口に入れてから、「果汁を味わう時間」がしっかりありました。
ゲイシャとの違いの説明もしてくださいました。パカマラよりフレッシュで、パパイヤやミントのような爽やかさがあるとのこと。
カップで感じるあのフレーバーが、チェリーの段階から確かに存在しているのが分かります。
試験区画を除き、この農園のほとんどはパカマラが植えられています。
松の木と農園の景色
その後も引き続き農園を案内していただいたのですが、山の斜面にコーヒーの木が広がり、トレッキングをしながら農園を歩いている感覚。
しかも景色が圧巻。特に印象的だったのが、シェードツリーとして使われている松の木です。
松の木は、日陰を作るだけでなく、落ち葉がクッションとなり、雨水をゆっくり土へ浸透させる助けになり、さらに深く広く根を張ることで、斜面での土砂崩れを防いだり、重みで雑草が生えにくくなるなど、複数の役割を担っています。
一般的には「松は土壌を酸性にするので良くない」と言われがちですが、もともと松があった土壌だからこそ成立している相性なのかな。
この農園にとって、松の木は欠かせない存在だということがわかりました。
ゲイシャとの違い
パカマラとゲイシャが並んで植えられている区画では、実の付き方の違いもはっきり。
エルサルバドルのゲイシャを食べてみると、パパイヤ、甘くないメロン、フルーティーで爽やか、といった感想が浮かびました。
パカマラの「しっかりした甘さ」とは方向性が違い、食べ比べて初めて納得できました。
葉もゲイシャの方が小ぶりで、どこか上品。この日はかなり風が強く、「普段もこうなの?」と聞くと10月ごろにたまにある程度で、珍しい一日だったそうです。気候変動の影響ですね。
害虫・歴史・品種の話
バッタ対策のトラップや、葉に開いた丸い穴(バッタ被害)も見せていただきました。

この農園は1980年に始めたお父さんの代から続く農園で、比較的新しい農園。
1990年代のコーヒークライシスを経験し、林業補助金のタイミングで松を植林した後、COEが開始してからは「勝つために」松を切らず共存を選択した、という背景があります。
結果として、今のサンタロサの個性が形づくられました。
収穫と管理体制
急斜面の農園での作業は多岐に渡ります。
高い木は枝ごと引き寄せて収穫。畝ごとに横に進み、熟した実から順に数週間ずらして3回収穫と、想像以上に過酷な環境で、一粒ずつ収穫してくれるピッカーさんへのリスペクトが自然と湧いてきました。今まではなんとなく想像していた感覚がリアルな手触りを持った瞬間でした。
ラウルさん自身は市内在住で、週1回ほど農園を訪問しています。
日常管理は農業大学時代のインターンから就職というキャリアを経た管理人のパティちゃんが住み込みで行っており、農園管理からプロセスまで担当しています。彼女の存在が、農園のクオリティ向上に大きく貢献しているそうです。

品種の多様性と面白さ
パカマラ品種とは、エルサルバドルの研究機関で開発され、パカスとマラゴジッペの掛け合わせで作られた大粒の品種。
ジューシーな果実感と、良い質感のしっかりとした甘さが特徴の品種です。
親となったパカスは優しい甘さで収量がよく、低く育つので扱いやすく、マラゴジッペはしっかり甘みがあり粒が多くカップクオリティが高い。
その二つのいい所に成功した優良品種のパカマラですが、パカマラの種を植えても、先祖返りでパカスが出ることがあるんだそう。先祖返りするのを知らなかったので、びっくりしました。
熟度が揃ったパカマラのチェリーはシロップのように果汁が出てくる一方、未熟だと何も出てこないのも印象的でした。
アプリケーション(施肥・防除)
さび病は、付いてから葉を取っても意味がないため、事前のアプリケーションが重要、とも教えていただきました。アプリケーションとは、コーヒーの木を健康に保つための処方。
肥料の投与、病害虫対策、そして葉面散布を、成長サイクルに合わせて行います。
「美味しさ」は時間が作る
「シェードが多いと収量は落ち、熟すのに時間がかかる。でもその時間こそが、有機酸を蓄え、フレーバーを作る。
だから、美味しくなる。
葉の色を見るだけでも、農園の健康状態や土壌の水分保持が分かる」とのこと。
農園で年中通して見ている人たちだからこそわかる情報を知ることができました。
気持ちの変化
この日は標高1,440m〜1,650mを歩き回り、インプットの多さに圧倒されました。
正直、オリジントリップに行く前は「バリスタ人生で一度は農園を見たい」、
「それを経験としてお客様に伝えられたら十分」、そして「この体験を届けたい」
そう思っていました。
でも実際は、今回の経験だけでも素晴らしい経験だけれど、他の国の農園も見てみたい、という気持ちが湧いてきました。「土壌や国の取り組みの違いを体感したい」、「実際の収穫や、影の仕事になって伝わりにくい期間について知りたい」、と感じ、今回感じたことを伝えるだけで終わらせず、ディスカッションしたい。自分たちの扱わせてもらうコーヒーへの向き合い方を変えたい。
と、今までと違った目線でのコーヒーへの情熱に火がついた感覚があります。
まだ言葉にしきれていないけれど、報告会やディスカッション、お客様との会話の中で少しずつ言語化していきたいと、強く思いました。




