ヘッドロースターのTakuyaです。2025年5月の下旬に、インドネシア ジャワ島を訪問しました。Kurasuは現在インドネシアに4店舗を展開していますが、私としては初めてのインドネシア訪問でした。コーヒー生産国でありながらも、同じKurasuの仲間が働いているインドネシアは、少し特別な場所に感じます。旅の中で、今年の春にリリースしていた農園であるFrinsa Estateを訪問したので、今回はそこで見てきた内容を綴ります。

Frinsa Estateは、西ジャワのバンドンに位置します。バンドンへは、ジャカルタから新幹線のような列車に乗り、約30分で着くことができます。ジャカルタよりも冷涼な気候で避暑地として人気があり、ロースターやカフェも多く、若者文化が発達しているエリアです。バンドンで開催されたカッピング会には、多くのローカルロースターが参加し、活発に意見交換や情報交換がされるなど、コーヒー文化の熱気が感じられました。そしてバンドンの中心地から、車を2時間ほど走らせるとFrinsaのオフィス兼倉庫のある場所へ到着します。今回私たちはオフィスの隣にあるヴィラに滞在させていただきました。

Frinsa Estateは、2010年にWidan Mustofaがスタートさせたコーヒー農園です。Wildanは学生時代Soil Sciense(土壌学)を学んでおり、当時からインドネシアの環境問題に関心があったそう。コーヒーノキは野菜よりも根を深く張る性質があることを学んだWildanは、当時頻発していた地滑りや洪水に対して、コーヒー農園事業を始めることがその解決策になり得ると考えました。離農が多かったWenniggalihというエリアで働く農家に対して、コーヒーの苗を有償で提供するところから事業をスタートしたWildan。適切な農法により今では土壌環境や農家の収入も改善し、多くの若者がこのWenninggalihに戻ってきています。

Wildanが指導する農法は、彼らの農園の様々なところで見ることができます。
例えば、コーヒーノキとコーヒーノキの間にある穴。Frinsaの農園では1本の木に対して必ず1つの1m四方の穴が掘られています。「ジャワ島では雨季が始まるタイミングで一気に雨が降るのですが、乾いた土に雨が一気に降り注いでも土は上手く水分を吸収できず、逆に栄養分を流し落としてしまいます。だから穴を掘ってあげることで、雨を効率的に使用しているんです。ハンドドリップの蒸らしのようなものですね。」彼の土壌への知見は見事にコーヒー栽培に応用されており、それはカップクオリティにも反映されています。

今回の訪問では、Wildanの息子であるFikri Raihan Hakimが、Frinsa Estateの代表として私たちを案内してくれました。訪問した幾つかの農園の中でも、Weninggalihは、60haとかなりの大きさを誇ります。そこで栽培しているのは、ほぼ全てがインドネシア土着の品種。35haがAteng super種の区画、残り25haでLini S、P88、Sigarar Utangなどの品種を栽培しています。彼らはこの土地で栽培されるAteng superのフローラルなフレーバーを評価しており、2023年のCOEで入賞したのもAteng superとLiniSのミックスバラエティでした。

この土地では元々はSigarar Utangを多く栽培していたものの、ネマトーダ(線虫)への耐性が弱く、多くが収穫不可に陥ってしまったため、現在はネマトーダへの耐性がある品種(P88、Lini S、Ateng super)に植え替えを進めています。また、3年に一度、コーヒーノキのそれぞれの枝を区別して剪定を行うことで、病害虫のリスクを減らし、効率的な生育を促しています。
私たちが昨年購入したロットはミックスバラエティ(Borbor, Lini S, Andung Sari, P88, Ateng superのブレンド)のウォッシュドで、そのクリーンさとコンプレックスな味わいに驚き、購入を決めました。しかし現地でのカッピングを通して単一品種の素晴らしさに気付き、Fikriに相談をしたところ、来年からオファーしてもらえることになりました。それぞれの土着品種が持つ味わいを皆さんにお届けできるのが今から楽しみです。

収穫が終わったチェリーは、農園の中にあるウェットミルまで運ばれ、24時間以内にパルパーで果肉が除去されます。その後、水洗いされたパーチメントは近くのグリーンハウスで約1週間ほどかけて乾燥されます。

収穫〜乾燥の期間は、予め45日間の天気予報を見てプランが立てられます。この時期は季節労働者が多く、またジャワ島の土地柄、乾季であっても霧や雨が発生する可能性があるため、どんな天候でも一貫した品質を維持できるオペレーションをフォーマット化しています。例えば湿度が○○%を超えた日は、乾燥台に積むパーチメントの厚みを薄くする、1日にパーチメントをかき混ぜる回数を増やす、そもそも乾燥させる量を減らすなど、状況に応じて具体的な数値を元にアクションを決めておくことで、品質をコントロールしています。また、乾燥ロット毎に水分値や日付を記入するタグが付いており、どこかで問題があった場合に全工程をトレースできるようになっています。

乾燥後は、自社で所有しているドライミルにパーチメントが運ばれ、脱穀されていきます。脱穀が終わると、サイズ選別→密度選別→色選別と機械による選別を3工程通った後、ハンドピックにより最終選別が行われます。そうして残った生豆が麻袋に詰められ、私たちロースターのもとに届くことになります。


こういった品質維持の取り組みは、自社農園ではコントロールができているものの、コレクティブファーマー(Frinsaが買い付ける周辺農家)では難しさを感じているそうです。そのため、最近は信頼できるパートナーファーマーと知識を共有して、単一農園としてロットを作るプロジェクトをスタートしています。そのパートナーファーマーの一人がGarutというエリアで農園を営むBaktiです。

Baktiは元々ジャカルタの金融業界で3〜4年ほど働いていましたが、自分が育った村に貢献したいという想いから、2021年に故郷であるGarutエリアに戻りコーヒー農園のオーナーになりました。「地元に何にも使われていない土地があるのに、それを活かさないのはもったいない」と彼は語っていました。農園をスタートした当初は肥料や設備などの先行投資が多く赤字だったものの、4年経った今ようやく黒字化の兆しが見えてきたと言います。現在は農園で働く10世帯の家族の生活を支えており、地域の女性のエンパワーメントにも貢献しています。ソーシャルメディアなどで農家の魅力を発信するBakiti。“Farmers can be creative(農家はクリエイティブになれる)”と語っていたのが印象に残っています。彼のように、若者が地域貢献をモチベーションとして地元に戻ってきて農園を始めるケースはジャワ島で増えているようで、コーヒー生産地の新しい動きを感じられました。

今回の旅では、生産者とロースターの距離感が非常に近いことが印象的で、それが若者たちの生産地へ戻る動きやインドネシアのコーヒーシーンの活気を生み出す原動力となっているように感じました。生産国としても消費国としても、今後の変化が非常に楽しみな国です。
Baktiのコーヒーも含め、Frinsa Estateから4ロットほど今回は買い付けています。どれも素晴らしいコーヒーなので、リリースまでお楽しみに。


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