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Mount Coffee (広島):2018年6月 #クラスパートナーロースター

次に紹介する#クラスパートナーロースターは、広島のマウントコーヒー。「のんびりとした風景、穏やかな午後、そんな言葉が似合う街」と店主の山本さんが表現する、庚午北に位置する豆販売専門店だ。


オープンから丸4年を迎えるマウントコーヒーを切り盛りする山本さんは、コーヒー業界で18年の経験を持つ。高校卒業後留学したバンクーバーで初めてスターバックスに出会い、気軽にコーヒーをテイクアウトする文化や店舗数、規模などに衝撃を受ける。実際に日本でもスターバックスでの勤務を経験し、その後も自家焙煎を行うカフェなどを経て広島の人気店、green coffeeにて知識と技術を磨いた。


コーヒー屋、という仕事に心底ほれ込んだ山本さんは、次第に自分の店を持ってやって行きたいと考えるようになり、独立を決め現在に至る。

オープン後は、地元の環境にもスムーズに受け入れられ、「この辺にコーヒー屋さんなかったんだよ」と喜ぶ声もたくさん。平日でも訪れる人の絶えない、活気のある店に成長した。



「八百屋も魚屋も、鮮度のいいものを仕入れて売る、コーヒー豆もそれで十分だという感覚もあります」


店を構える場所として選んだのは、自宅からほど近い、商店街の一角だ。クリーニング店や花屋など、地元の人々の生活を支えるエリアにあることに意味がある、山本さんはそう考える。

「街に出るんじゃなく近くで、豆が切れたらすぐ買える、豆屋はそういうのがいい」と山本さんは話す。野菜を買って、魚を買って、そんな日常の買い物の自然な流れでコーヒー豆も買いに来てほしい。地元に根付いた商売で、美味しいと思って飲んでもらえる毎日のコーヒーを売ればそれで成り立つ、それがマウントコーヒーの立ち位置だ。


その姿勢は、焙煎にもはっきりと表れている。「八百屋も魚屋も、鮮度のいいものを仕入れて売る、コーヒー豆もそれで十分だという感覚もあります」と語る山本さんは、コーヒーの味わいを決めるのはあくまでも豆であり、焙煎機をはじめとした道具でどうにか操作しようとするものではないと考えている。使用している焙煎機は、フジローヤル、半熱風の5㎏。昔から使い続けている、体に馴染んだ焙煎機だ。焙煎を始めた当初は、煙突の付け方一つなどでも味が変わる事に悩まされもしたが、試行錯誤を重ね、自らの手と生豆の自然なバランスを崩さない焙煎にたどり着いたという。「豆がすごく大切で、それを取り出すのが仕事。下手なことをしない限り大丈夫です」と話す山本さんが生み出すコーヒーは、力づくでも、当てずっぽうでもない、熟練の技術と素材を見極める目に支えられ、独特の味わいを持つ。


店頭に並ぶ豆は通常9-10種類。ブレンドが6種類と、シングルオリジンだ。山本さんが初めに取り掛かったのがブレンドを作ること。番号で焙煎度合いを示すシステムを採用し、一目で分かるようにしている。さらにブレンドに使用しているシングルオリジンを個別に販売することで、好みの味を見つけやすいようにしている。豆を買いに来た人々には試飲も提供し、できる限り直接会話をしながら希望に合う豆を提案する。

メニューにはほとんど情報を載せない代わりに、話しかけてもらいやすく、話しかけやすい雰囲気づくりを心掛けているという山本さん。腰を据え、小規模で行うローカルビジネスだからこそ実現できる環境だ。



「日本の深煎りは独特。スペシャルティコーヒーなど様々な文化が取り入れられて進化してきたもの。それを世界に向けて紹介できれば」


今後は焙煎量を増やしていくと共に、アジアの豆をもっと使っていきたい、と山本さんは話す。というのも、スペシャルティコーヒーの豆が売られるときの現在のプロセスにたびたび疑問を抱くことがあったからだ。遠く離れたアフリカや中南米の豆が主流である現在、豆自体の味わいについては曖昧なままに、農園の小さな写真と、標高、近くに湖があるなどの周囲の環境といった断片的な情報だけで判断しなければいけない時。反対に、極端に味にフォーカスし、数値のみが機械的に示されているため、農作物としての実感が得られない時。そんな経験をするたびに、客観的に判断できるデータもありながら、本当に分かるストーリー、農家がやって来たことが分かるコーヒーがあれば、という思いが募っていった。そしてそれを実現するためには、距離が近く、同じアジア人として通じるもののある場所で生み出されたものを扱う方がいいのではないか、と考えるようになったのだ。

 

今回の定期購買用に提供するのはインドネシア産のコーヒー。同じ豆を、浅煎り・深煎りと2種類の異なる焙煎度合いで紹介する。浅煎りはトマトのような独特の味わいを持ち、インドネシアのキャラクターをよく表現した仕上がり。深煎りは、苦みやコクを一度美味しいと思えると途端に広がっていく深煎りの世界の案内役となれれば、という願いを込めた上での選択だ。


日本にはまず深煎りが浸透し、その上にスペシャルティコーヒーの文化が取り入れられたことで、深煎りもその影響を受け、進化を遂げている。日本から、世界へ向けて発信する今回の機会では、アジアの豆で、今の日本のコーヒー、そしてそのポテンシャルを胸を張って表現したい、そんな想いを抱いている。


地に足のついた、という言葉がぴったりとあてはまるマウントコーヒー。地元の人々の生活を支え、地元の人々に生活を支えられるという満ち足りたサイクルは、日々心地よくそのリズムを保ち、庚午北という地で息づいている。一方で、台湾のコーヒーフェスティバルや東京でのイベントなど、外部の催事にも積極的に参加し、限定のブレンドを出してみたり、新しく出会う人々や物事との関わりに刺激を受けたりと、自ら成長する機会も逃さない。「今はこう考えてます、というのがあっても、また新しい経験をすれば変わっていくんだろうなぁと思います」と穏やかに話す山本さんからは、オーガニックに生きるという事の本当の意味を見せていただいたように思う。