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Kurasu Journal:一粒一粒の豆に意味と意志を込めて、コーヒー産業の裏側に迫る。

Kurasu Journal:一粒一粒の豆に意味と意志を込めて、コーヒー産業の裏側に迫る。

こんにちは、焙煎チームのJongminです。
突然ですが、みなさんが購入したコーヒー豆袋の中に、ジーンズのファスナーが入っていたら、どうされますか?お客様からすれば、たまったもんじゃないですよね...


お客様の手元に届いてはいませんが、しかし、これは実際に起きた出来事です。そのとき、ある種の職業病かもしれませんが私はかえってすごく興奮しましたね。きちんと人とコーヒーの仕事をしているということが肌で感じられた瞬間でした。

例のファスナー...取り除けて良かったです。

まだまだ知らないコーヒーの裏側

コーヒーの生産、それは遠い土地の物語、月の裏側が未知の領域であるように、コーヒー産業の裏側も多くの人には知られていません。現場にいる私たちでさえも、日々の業務の中で、生産国の事情についてわからないことをわかる、そんな出来事の連続です。

その他にも、木の枝、石など。

コーヒーは、自然と人の力で育まれ、あたりまえなことですが、虫に食われたり、欠けて割れたり、人の顔立ちがみんな異なるように遺伝的に形が異なるものなど、様々な豆が混合されます。もちろん、農家さんのファスナーが入り混じることもあるでしょう。

しかし、この状況をできるだけ防ぐために、品質管理の視点からは、カップクォリティーはもちろん、豆の状態という視点も念頭に置き、複数の基準から買い付けを行っております。

欠点豆「0%」の難しさ

ただ、それでも欠点豆を「0%」にすることは実に難しく、また本質的な意味を持たないと考えております。おそらく一つの麻袋には、数万から数十万粒の豆が入っており、それら一つ一つに欠点と合格点の名前をつけることは、理にかなわないことでしょう。

豆の品質を考える上で、無印良品が掲げているような「これがいい」ではなく、「これでいい」のような、完璧を追求するのではなく、自然による不完全な美しさを認め、それを価値として受け入れる姿勢。そこに一定の余白を残すと同時に、きちんと想像力を働かせて向き合うことは、一定、必要だと、ファスナーとの出会いから、ここ数か月焙煎の現場で、欠点豆を手で取り除きながら悩みました。

社内勉強会の実施|欠点豆から高まる豆の解像度

そして、悩みの解決も兼ねて、カフェバリスタ、焙煎チーム、カスタマサポートなど、Kurasuを支える各セッションのメンバーにどのようにアウトプットするのか工夫し、先日社内で「欠点豆勉強会」を開催しました。

内容は、虫食い、未成熟、過発酵豆、欠け割れなどなど欠点豆を種類ごとに分けて、カッピング。そして、欠点豆の混合率が異なるサンプルを複数パターンで用意し、実際の味わいにどれだけ影響を与えるのか、検証する内容でした。

これらの内容を通して、伝えたかったコトの本質、それはカップへの影響という部分ももちろんですが、コーヒーに対する見方や考え方を拡張する意図も含んでおりました。

消費者に意志を示し、生産者の意味を読み取る

私たちは、日ごろよりKurasuを応援してくれているお客様へ良いプロダクトを届けるために、欠点豆を取り除く仕事をして意志を示していきます。また、一方では産業の一員として、欠点豆を受け入れる使命を持っている気がします。これは、とても矛盾している話のように聞こえます。そのとき、ある言葉を思い出しました。

以前、KOHIIというアプリで、コーヒーの生産者をインタビュー取材することがありました。当時、書いた文章の一部を紹介します。

ロースターとしては、欠点豆がないコーヒーを買いたいという気持ちがあたりまえだと思うんです。でも生産者としては、欠点豆を除いてしまうと、それだけ収入が減ってしまうんです。例に全体の豆の5%を欠点豆として取り除くとしたら、トン単位で取引する農家は、数十キロという相当な量を破棄することになります。生産国におけるコーヒービジネスは量と重さのビジネス。生豆にしろ重量で取引されることが多く、農家さんはできるだけ破棄になる豆を減らしたいと考えています。

複雑なサプライチェーンの中で、多様なケースがあるという大前提に、欠点豆の混入には、生産地の労働状況や環境といった要素が必ず影響しています。ロースターとしての私たちの役割は、欠点豆を「欠点」として排除するのではなく、その背後にある物語や意味を理解し、尊重する上で、消費者にはよりよいモノを届けるように整えることだと、改めて実感しました。

一粒一粒の豆が紡ぐ世界へ想いを馳せて

焙煎チームの仕事は、美味しいコーヒーを安定して供給すること。その過程において、カップを取り、豆について考える時間を過ごし、コーヒーに対する解像度を深めます。そして、結果的に大切な原点に着地することになります。それは、まずは見方や考え方を知ること。見方を知ることで、きっとコーヒーの世界はより濃く映りこんできます。

欠点豆という存在は、コーヒーの世界において一つの不可欠な現実です。

私たちはコーヒー産業における一人のメンバーとして、この現実を自分事として受け入れて、美味しいコーヒーを届けていきたいです。コーヒーのサプライチェーンは、多くの人々が関わり、数多くの段階を経ています。その中で、欠点豆を取り除くことは小さなアクションですが、想像力を刺激し、産業の一員であるという意識を育む重要な役割を果たします。

私たち焙煎チームの日々の努力は、一粒一粒の豆に込められた意味と意志を大切にし、農家からバリスタ、そして最終的にコーヒーラヴァーのみなさんの手元に届くまでの物語を紡ぐことです。


ここまで長い文章、お付き合いいただきありがとうございました。
今日も良い一日をお過ごしください。

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