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タイのコーヒーってどんな味?(前編)Akha Ama Coffeeの挑戦

タイのコーヒーってどんな味?(前編)Akha Ama Coffeeの挑戦

みなさんは、タイのコーヒーにどんなイメージを持っていますか?

東南アジアではベトナムやインドネシアをはじめ、タイ、ラオス、ミャンマーなどでもコーヒーが生産されています。

Kurasuでもタイのコーヒーを取り扱っています。「Thailand Ayo & Mikal」、昨年に続き同じ生産者によるロットです。
タイでコーヒー栽培が始まったのは、今から約30〜40年前の1990年代前後のこと。中南米やアフリカのような長い歴史はありませんが、タイは「コーヒーベルト」(北緯25度〜南緯25度)に位置し、理想的な環境を備えています。

  • 理想的なアラビカ種の条件:気温18〜22℃、標高800〜2,000m、降雨量1,500〜2,000mm
  • タイ北部(チェンマイ・チェンライ):気温15〜24℃、標高800〜1,500m、降雨量1,200〜1,800mm

タイのコーヒーを生産する環境は北部(チェンマイ、チェンライ)の気温は15〜24℃、800〜1,500mの標高、年間1,200〜1,800mm程度の雨が降ります。自然環境的にも非常に恵まれた土地で、スペシャルティコーヒー生産に最適な環境だと思います。

今回は、そんなタイのコーヒー生産に関わる方々を2本の記事でご紹介します。」

前編では、タイのコーヒー生産者を支援するAkha Ama Coffee(アカアマコーヒー)のLeeさん、Jennyさんへのインタビューを、後編では、KurasuがAkha Ama Coffeeから購入して紹介している生産者、AyoさんとMikaさんのインタビューをお届けします。


Akha Ama Coffee ― コーヒーで地域を豊かに

Akha Ama Coffee(アカアマコーヒー)は、LeeさんとJennyさんによって2010年に設立されたコーヒーショップです。タイでは3店舗を展開し、今年で15周年。日本でも東京に2店舗を構え、活動は5年目になります。

Leeさんは、もともとチェンマイの慈善団体「Child’s Dream Foundation(チャイルドドリーム財団)」で地域支援に携わっていました。「どうすれば地域の人々が自立できるか」を考える中で、コーヒーが新しい希望になると感じたといいます。

「コーヒーは単なるビジネスではなく、地域の課題を解決する手段でした。
環境に配慮し、若者に教育と仕事の機会を生み、地域全体を豊かにする仕組みをつくりたかったのです。」
— Lee

アカアマコーヒーでは、コーヒーを果樹などと一緒に植える「多様性のある農業」を推進し、自然と人が共生する農園づくりを進めています。Kurasuで今回取り扱う豆の生産者、Ayo & Mika夫妻も、その取り組みの中で育った若い世代の一組です。

今回は、アカアマコーヒーの設立者であるLeeさん・Jennyさんにインタビューを行いました。

アカアマコーヒーの設立者であるLeeさん(左)とJennyさん(右)。写真の右下には遠隔でインタビュー取材をしているMooくん。

ーー何年間、コーヒーのお仕事をされていますか?

Lee:2010年から始めて、今年で15年になります。

ーーコーヒーを始める前は何をされていたのですか?

Jenny:特に仕事はしていませんでした。
Lee:僕は、チェンマイにある「Child’s Dream Foundation」という財団で3年半働いていました。そこでは、教育や生活環境の厳しい人たちがより豊かに暮らせるよう支援する活動をしていました。

ーーなぜコーヒーを始めたのですか?

Lee:自分で仕事をつくるために、新しいチャンスを探していました。当時は、コーヒーの仕事が「職業」として確立されていたわけではありません。でも、何よりも自分たちの村や地域の課題を整理し、より良くしていくためにコーヒーを始めました。

「お金を稼ぐために何をするか」というよりも、「自分たちの活動が社会にどんな良い影響を与えられるか」を大切にしています。例えば、環境面ではコーヒーの木を果物の木と同じエリアに植えています。もともとある植物を抜かず、いろいろな種類の植物と一緒にコーヒーを育てるんです。

経済面でも、コーヒーが今後発展していくことがわかってきたので、若い世代も興味を持ち始めています。コーヒーには生産、焙煎、経営、バリスタなど多くの職業が関わるので、地域の若者たちに学びや仕事の機会を与えることもできます。

Ayo & Mikaのように、実際にチャレンジする若者たちは増えています。彼らは「地元で働く」ことをネガティブに捉えず、むしろ山の上でも新しい仕事を生み出していける。そうした動きが広がれば、若者と年配の人たちが一緒に暮らしやすい地域社会をつくることができると思います。

私たちが伝えているのは、コーヒーの売り方だけではありません。知識を共有することで、それぞれが成長し、暮らしやすい環境を自分たちで作っていけるようになると考えています。

収穫中のAyoさん

ーー今回紹介してくださった生産者のAyoさん & Mikaさんは、どんな方たちですか?

Jenny:今回紹介する生産者Ayo & Mikaは、30代未満の新しい世代の方たちです。Mikaは私の妹で、Ayoと結婚してAyoの家族のもとへ引っ越しました。

もともとAyoの家族はコーヒーだけでなく、トマトなどさまざまな作物を育てていました。AyoとMikaが一つの家族になってから、私たちはコーヒーをメインの作物として育てていくよう応援し、生産方法の整理や植樹のアドバイスを行いました。

彼らは親世代よりも柔軟で話しやすく、学んだことをすぐに実践してくれるタイプです。親世代ではコーヒーよりも他の作物に重きを置いていましたが、それをそのまま引き継ぐと、環境や健康の面で良くない影響もあります。ですから、私たちはコーヒーの知識や生産方法についてアドバイスを続けてきました。

今では長く一緒に仕事をしており、信頼関係も深まりました。アドバイスしたことを信じて実践し、結果的に他の農作物からコーヒー中心の農業へとシフトしました。その後は品種や生産方法の検証にも取り組み、2〜3年の間に自分たちなりの方向性を掴んでいます。

最近では、どのプロセスと品種を組み合わせればどんな風味が生まれるかをイメージできるようになり、自信を持って取り組んでいます。

Lee:今の若い世代、特に20代の人たちは一度村を出て街で経験を積み、再び村に戻って地域を豊かにしていく動きを見せています。その中で、親世代と相談しながら農作物やコーヒーの生産方法を見直しています。

親の世代は、主にコマーシャルコーヒー(商業用コーヒー)を中心にしていて、味やプロセスに対する理解が深くありませんでした。一方で、今の若者たちはスペシャルティコーヒーの知識を持ち、「どんなコーヒーを作れば売れるか」「どんな品質が評価されるか」を理解しています。

今回のAyo & Mikaのようなケースは、村の同世代の若者たちにとって大きな刺激になると思います。

農園でハニープロセスによる精製を行う若者たち

ーーKurasuが取り扱うことによって、どんな変化を感じましたか?

Jenny:私は生産プロセスを直接担当しているわけではありませんが、今回の取り扱いを通して、彼らのコーヒーの基準が明らかに上がっていると感じます。自分たちのコーヒーが海外で評価され、使われていることにとても誇りを持っていて、その経験が生産の自信にもつながっています。

Lee:Kurasuがタイのコーヒーを紹介してくれたことで、Ayo & Mikaだけでなく、他の生産地の知名度も上がっています。タイの生産者の間でも「Kurasuが自分たちの国のコーヒーを扱っている」と知られていて、それが日々のモチベーションや具体的な目標につながっています。

これから、タイのコーヒーは世界のメインストリームの一角を担うかもしれません。もう「タイ産だから」と恥ずかしがる必要はなく、誇りを持って“自慢できるコーヒー”を作れる時代になってきたと感じています。

ーータイのコーヒーにはどんな特徴がありますか?

Lee:タイには多くの品種があります。古くからあるのはCatuai、Caturra、Catimorなどです。特にCatuaiとCaturraは、タイでも非常に高品質に生産できると思います。

ボディがしっかりしており、酸味(Acidity)や甘み(Sweetness)のポテンシャルが高い。全体的にバランスの良い構造を持っています。抽出もしやすく、ホットでもアイスでも美味しく仕上がります。生豆としても扱いやすく、シングルオリジンでもブレンドでも使いやすいです。

個人的にはアロマやフレーバーの派手さは控えめですが、コーヒーとしての骨格や構造は非常に優れていると思います。

ーータイで人気のある品種やプロセスは?

Lee:品種としては、Java、Typica、Bourbon、Batian、Geishaなど、プロセスは、Washed、Honey、Naturalと多様に行われています。

ーー今後、タイのコーヒーはどんな方向に進むと思いますか?

Lee:今のタイのコーヒーは、以前とは全く違います。生産者たちは多くの知識を身につけ、安心してコーヒーづくりに取り組めるようになりました。

今後は「たくさん作る」よりも、「価値のあるものを少量でも丁寧に作る」方向に進むと思います。5〜10年前に注目され始めたJavaやBourbonのような希少品種が、今後ますます重要になっていくでしょう。

これまでは生産面を中心に取り組んできましたが、今後は店舗やブランディングの面にも力を入れていきたいです。

ーー日本のアカアマコーヒーは、今後どこを目指していきますか?

Lee:日本の店舗は、これからタイにある他のコーヒーショップにもインスピレーションを与えていくと思います。アカアマコーヒーは5年間問題なく続けてこられたので、他の店舗にとっても良いケーススタディになるでしょう。

私たちは、生産者に豊かな暮らしと認知の機会を提供してきました。これからは、日本の消費者とのつながりを活かし、「ブランド」としてだけでなく、国を超えた交流の場として広げていきたいと考えています。

例えば、オリジントリップなど、互いの文化や環境を体験できるようなプロジェクトも構想しています。

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Leeさん、Jennyさん、ありがとうございました。

Kurasuがアカアマコーヒーから購入しているAyo&Mika夫妻の豆はこちら。世界でますます注目されるであろうタイのコーヒー、ぜひ味わってみてください。

後編ではいよいよ、生産者AyoさんとMikaさんのインタビューをお届けします。ぜひお楽しみに!

Text: Production team, Ratchatajaroentad Ponrawit(a.k.a. Moo)

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