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Craftsman Coffee Roasters (山口):2019年3月 #クラスパートナーロースター

次にご紹介する#クラスパートナーロースターは、山口県下関のCraftsman Coffee Roasters。2016年10月にオープンし、「自分たち、そして自分たちのお客様と豊かに暮らしていくにはどうしたら良いか」を考え提案していく存在として下関で絶大な支持を得ているカフェ・ロースターだ。今回のインタビューでは、下関市地方卸売市場内に焙煎によりフォーカスした店舗としてオープンした、THE LAB.に伺った。

 

同じく下関市内にあるカフェにはいつも暖かい笑い声が溢れ、常連客と会話を楽しみながらおいしいコーヒーを淹れているバリスタのバックグラウンドは、元消防士など多彩だ。更にオーナーの二人、高城さんは北海道育ちで、青山さんは横浜育ち。あらゆるものが一見意外な組み合わせでできているCraftsman Coffee Roastersは、しかしその複雑な魅力とそれゆえの強みを持ち、下関全体の地域産業活性化に貢献するほどの有名店だ。「彗星の如く現れた」と評されることもあるというCraftsman Coffee Roastersができるまで、そして彼らの魅力の秘密に迫った。

 

高城さんのストーリー

 

高城さんは静岡県に生まれ、北海道で少年時代を過ごした。大学は神奈川の東海大に進み、イタリアンレストランでのアルバイトを通して飲食業界に足を踏み入れることになる。母体であるグループの、地場産業プロデュースや地産地消を通して地域に貢献し、人々の暮らしを豊かにすることをコンセプトとした企業理念に非常に共感した高城さんは、大学卒業後も大学職員として勤務しながら、更に1年その企業でのアルバイトを続けることにした。そこでカフェ業務に異動になったのが、コーヒーとの出会いのきっかけだ。

 

その後家業の米農家を継ぐために下関へと移住した高城さん。閑散期と繁忙期の差が激しく、更に副業もしていたが、それでも食べていくのが難しいという現実に直面することになる。そこで経験を活かして飲食業を始めようと思い立ったのが、Craftsman Coffee Roastersの始まりだ。

 

「レストランなどの業態では、同じお客さまには多くて月に1回ほどしか会えません。そう毎日いく場所ではないですからね。でも、僕はもっとカジュアルに、自分のマンパワーがダイレクトに伝わるような場にしたかった。そこで、毎週のようにお客さまに会える場を、と思い、単価の低いカフェや珈琲屋さんをやろう、そう考えたんです」と高城さんは説明する。高城さんは早速バリスタである幼馴染の協力を得て、カフェをオープンすることになる。

 

 

青山さんのストーリー

 

フランス生まれ、横浜育ちの青山さんは、スポーツマネジメントを学んだ東海大学で高城さんと出会った。スポーツイベントを一緒に企画・運営するなど、高城さんとは学生時代に大いに活動を共にし、強い信頼関係を築き上げた。卒業する頃には、将来何か一緒にやりたいね、と言い合った。

 

その後はスポーツメーカーに就職し、東京や名古屋で営業として活躍した青山さん。ブランド価値を大切にし、直営店ビジネスを主に行う企業の一員として、店舗のマネジメントやスタッフ教育など、今の仕事に直結する素晴らしい経験を積んだ。やりがいのある職場で、自身の成長も実感していたが、漠然と、やりたいことを先延ばしにしていたら、いつかできなくなってしまうのでは、という思い、そして高城さんとの約束が頭をよぎるようになったと青山さんは振り返る。その頃熊本で地震が起こり、母校の阿蘇校舎に通う学生が亡くなったという痛ましい知らせを聞き、これ以上先延ばしにはできない、という思いが決定的になったという。

 

下関に移住した高城さんをよく訪ねていたという青山さんは、Craftsman Coffee Roastersのカウンター席に座っては、スタッフの接客や店の雰囲気などを時折眺め、自分なりに思ったことを高城さんに伝えたり、イベントがあれば手伝ったりなどしながら、早い時期からカフェの経営に関わっていた。「毎日のように連絡を取り、店の売上やその日の出来事、またイベントの戦略など、離れていても生活の3分の1ほどは一緒に過ごしているような形でした。イベントの戦略を立て、反省会をして・・・そういうのがすごく楽しかったです」と青山さんは振り返る。

 

更に名古屋営業時代に遊びに来てくれた高城さんにTRUNK COFFEEを紹介され、すっかり気に入った青山さんはその後、毎日のように通うほど、コーヒーのある暮らし、そしてコーヒーそのものに興味を持つようになっていた。コーヒーのある暮らしを提供するにはどうすればいいか?気づけば青山さんの心の中に、「やりたいこと」が芽生えていた。

 

ところ変わって下関では、高城さんが頭を悩ませていた。スペシャルティコーヒーに通じたバリスタに、最高の一杯を出してもらっている。しかしなぜかそれではうまくいかない。良し悪しの基準の置き方、正解・不正解がはっきりと決まっているもの、そのスタイルが、この街に今ひとつしっくり来ていないと感じていたのだ。

 

そこで高城さんは、大きな決断をする。話し合いを持ち、当時のバリスタに、店のコンセプトと街が求めているものにおそらくずれがあること、このままではいけないことを伝え、断腸の思いで解雇したのだ。

 

それに伴って店の顔ぶれも大きく変わることになるー常連客の一人が、消防士を辞めてカフェで働きたいと申し出てくれたのだ。そうして少しずつメンバーが揃いはじめ、青山さんを正式に共同経営者として迎え入れると、次第に店の運営も波に乗りはじめた。外交の高城さん、ソフトの青山さん、と、役割分担もはっきりとし、現在のCraftsman Coffee Roastersが出来上がった。「共同経営ってよく反対されるんです。でも僕たち二人は、かならず落としどころを見つけられる。喧嘩は絶対しないです」と高城さん。二人の約束がついに実現した。

 

Craftsman Coffee Roastersの焙煎

 

スペシャルティコーヒーを地域に受け入れてもらうにはどうしたらいいか。高城さんらが出した答えは、一般的なスペシャルティコーヒーの評価基準だけでなく、良し悪しの基準を、自分たちの中にしっかりと確立すること。そして、それを自分たちの言葉で言語化できるようにすることだった。

 

スタッフそれぞれの胸の中には、初めてスペシャルティコーヒーと出会った時の体験が今も残っている。お店に来てくれる人がこれから体験するかもしれないその瞬間。それに寄り添って、相手の立場に立ったコーヒーの説明ができれば、きっと伝わるものがある。高城さんらは、そう考える。

 

甘さとクリーンな味わいを大切にするCraftsman Coffee Roastersの焙煎機は、Probatの12kg。初期から使用しているフジローヤルの半熱風5kgは、深めの焙煎を行う時に稼働させる。焙煎は高城さんを含めた3人のスタッフが担当し、まずは丸山珈琲など大手が採用するレシピやセオリーに沿って焙煎する。改善点があれば、自分たちなりに工夫を加え、調整するという流れだ。更に現場ではバリスタがそれぞれのコーヒーをいかに美味しく抽出できるかをサーブする時の気温なども含めて細かく調整する。

決まった抽出レシピがあるわけではなく、その焙煎の良さをいかに引き出せるかはバリスタの腕にもかかっている。自分のこだわりをのびのびと表現できる、バリスタにとってもやりがいのあるチームプレーなのだ。

 

 

Craftsman Coffee Roastersと下関のコーヒー事情

 

世界的にコーヒーが有名なブラジル・サンパウロの姉妹都市だという下関。その影響か、昔から喫茶店は多く、旧市内の人口は18万人程度だった時代から、自家焙煎所が10軒ほどもあるという。飲食店全体の中での割合としても非常に大きい数だと高城さんは説明する。「元々コーヒーを飲む習慣がある人は多く、印象としてはそのほとんどが50歳代のお客様です。ただ、昔ながらのコーヒーに親しんでいて、スペシャルティーコーヒーという言葉に馴染みのない方が多く、オープンしてから半年、1年ほどは『酸』という言葉を口にした途端敬遠されてしまう事がほとんどでした」そう高城さんは振り返る。

 

スペシャルティーコーヒーとはこういうものだ、とただ押し付けてもうまくはいかない。しかし、従来の深煎りとは全く味わいが異なるのも変えられない事実だ。そこで役に立ったのは、Craftsman Coffee Roastersが焙煎・抽出を通して培った「言語化できる力」だった。フレーバーノートなど、カップの中にある味わいを言語化して紹介し、宝探しのようにその味を探しながら飲んでもらうというサービスを取り入れたのだ。

 

すると次第に、人々の酸に対する考え方が変わってきた。「この間はこれを飲んだから今日はこちらを試してみよう」と色々な味わいに挑戦してくれるようになった人も増え、ただ「酸っぱい」で終わらせるのではなく、前向きなコミュ二ケーションが生まれるようになったというのだ。提供するものも焙煎度合いも、コーヒー自体は以前と変わらず、自分たちがおいしいと思うもの。それを紹介する作業への向き合い方を変えた事で、人々の意識まで大きく変える事ができたのだ。

 

下関港、門司港は古くからの観光名所だが、最近ではCraftsman Coffee Roasters目当てにタクシーやレンタカーで訪れる人の数が増えた、と青山さんは言う。特に近隣のアジア圏からの観光客はソーシャルメディアやGoogleなどにしっかりとレビューを残してくれる人が多く、またその情報を元に更に多くの人がコーヒーを楽しみに来てくれるのだという。

「時には、英語も日本語も話せないけれどインターネットで見たから、と言って来てくださる方もいらっしゃいます。僕たちもきちんとご対応できるようにしないと」と青山さんは背筋を伸ばす。

 

 

「豊かな暮らし」への歩み

 

これからの展望は?と尋ねると、「僕、いつかお花屋さんをやりたいんです」と高城さんが答えた。「豊かな暮らしにつながると思うものなら、何でもやりたいと思っているんです」と青山さんが続ける。「これまでは、目の前のお客さまや自分たちの豊かさを考えて来ました。今後はそれを地域社会へ広げられたらと考えています。」

 

昨年、下関の企業30店ほどに協賛を得て開催した、下関の魅力を発信するイベントは3000人を動員する大成功のうちに終わった。今年もすでに何件もの依頼が入っているという。「街自体に貢献しながら、素敵なお店が増えて行ったり、自分たちのお店も含めてコミュニティを活性化するのがこれからの目標です」と青山さんは説明する。

 他の業態とのコラボレーションも積極的に検討するのがCraftsman Coffee Roastersの柔軟さだ。地域にまだないものや、魅力あるものを探す取り組みの中で、ワークショップなどを通してつながりを生み出していく。

 「Craftsman Coffee Roastersにはマニュアルがありません。その代わり、何となくやってみる、ということはしません。それぞれが一人のcraftsmanとして、そしてCraftsman Coffee Roastersとして皆で考えた結果、やってみて失敗してもそれはあくまでも結果として捉え、次に活かすんです」、そう高城さんは話す。

 

「Craftsman=職人」として、コーヒーに関する技術を磨き続ける職人であるのは当然のことながら、その自負は、コーヒーだけにとどまらない。店で提供するスイーツや食事、店全体の空気を含めた店づくりに至るまで、徹底して自分たちの手で行う、そんな想いが、Craftsman Coffee Roastersという名前にはこめられているのだ。今後は個性豊かなスタッフの色ももっと前面に出していきたい、ディスプレイも工夫したい、と目を輝かせる高城さんと青山さん。二人の情熱は起爆剤となり、これからも下関を大きく変えていくことだろう。

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