HOOP (大阪):2018年9月 #クラスパートナーロースター

HOOP (大阪):2018年9月 #クラスパートナーロースター

9月 11, 2018 0 コメント

次にご紹介する#クラスパートナーロースターは大阪に位置するHOOP。彼らは日本ではまだ珍しいシェアロースター、HOMEを運営しており、昨年からKurasuも彼らのシェアロースターに参加している(Kurasuブログ記事「KURASU JOINS "HOME". HOOPが手がける新しいスタイルのシェアロースター」参照)。


オーストラリアやアメリカ東海岸ではより一般的に認知されているシェアロースター。HOOPも、そんなコミュニティでスキルをシェアし、共に、そして効率的に成長するという文化に影響を受けオープンしたロースターの一つだが、彼ら自身も焙煎を行っている点でよりユニークな存在だ。訪れるたびに暖かい笑顔で迎えてくれるHOOPの皆さま。今回はそんなHOOPのロースター、山田さんに改めてお話を伺った。


コーヒーとの出会い


山田さんがコーヒーの世界に飛び込んだのは大学1年生の時。スターバックスでのアルバイトを始めたのがきっかけだ。「甘いコーヒーしか飲めなかったんです、シロップの入ったラテとか。でもコーヒーについて勉強するにつれてすごく好きになりました」と山田さんは当時を振り返る。決定的な体験は社内での勉強会。異なる種類のコーヒー豆の違いを知ろうという目的で開催されたその勉強会で、スマトラとグアテマラを飲み比べた山田さんは、その味の違いに非常に驚き、同時に強く興味を惹かれたという。生産地による味わいの違いを初めて意識した瞬間だ。


この経験は卒業後も山田さんの心に残り、同じく生産地によって味わいが豊かに異なるワインへの興味につながった。現在のTAKAMURA Wine & Coffee Roastersに就職した山田さんはワイン部門で1年半ほど勤務。しかしコーヒーへの思いは強く、社会人として再びスターバックスへ戻る事となる。バリスタとして腕を磨き4年ほど経った頃、TAKAMURAでの先輩社員から、コーヒー部門の立ち上げに伴い責任者を探していると声が掛かった。ちょうどサードウェーブがトレンドとなり始めた頃、ワインの買い付けなどでカリフォルニアなどによく訪れていたTAKAMURAの代表が現地のコーヒーカルチャーに影響を受け、日本でも立ち上げたいと考えたのがきっかけだ。


山田さんがアメリカを訪れた時にもその文化の違いには驚いたという。「とにかくコーヒーを飲んでいる人が多い。日常に溶け込んでいるんですね。スタンプタウンなど、1杯4ドル以上するのが当たり前のカフェに人々が行列を作っている、まずそれに驚きました。テロワールを反映した、こだわりがこめられた浅煎りのコーヒーを、日常的に飲む人がこんなにもたくさんいるんだ、と衝撃を受けました」と山田さんは振り返る。


オファーを受けTAKAMURAに戻ってからは、一人で一から焙煎を学び、コーヒー関連のマシン類を選定し、エスプレッソの練習をし…全部まっさらな所から一人で部門を育てていった山田さん。「今考えるとすごい状況ですね」と笑う。大阪では他に使っている人のいなかったローリングスマートロースターを使いこなし、スタッフの採用も行うなどTAKAMURAのコーヒー部門立ち上げに大いに貢献した。その後山田さんは小川さん、後藤さんと出会い、HOOPが誕生することになる。

 

HOOPが裾野を広げる日本の焙煎


前回の記事でもご紹介した通り、HOOPは「Co Imagine ともに想像しよう」をテーマに、異なる文化やバックグラウンドを持つ人々が出会う場を提供し、そこで生まれる物語を通して様々な分野における人々の意識や感性を育むことを目的にしている企業だ。2017年7月のオープンから、1年が経った。オープン当初に予想していたよりも、ずっと個人のユーザーが多いと山田さんは話す。「プロバットを気軽に使えるという機会はなかなかないので、すごく喜んでもらえています。お仕事としてやっていなくても、コーヒーに詳しい人、コーヒーが大好きだという人がこんなにたくさんいるんだという事が分かりました」


自らカフェやロースターを経営していなくとも、気軽に訪れ本格的な焙煎機を使えるのが魅力のHOOP。この記事を読んでくださっている方々の中にも、ぜひ試してみたいと思っている方も多いのではないだろうか。実際に訪れた場合の流れについて伺ってみた。


「まずはコーヒーの違いを知ってもらうために、必ずカッピングしてから始めていただきます」と山田さんは説明する。味わいの捉え方については、カッピングシートを用いて味の要素を分解しながら教えてくれる。次に焙煎機の使い方と簡単な焙煎理論を指導してもらうと、いよいよ実践ーこれが初回の流れだという。もちろん1回だけでは完璧に使いこなせるようにはなかなかならないものだが、本格的な焙煎を自分の手で一通り体験できる。


浅煎りから深煎りまで、人により必要なアドバイスは大きく異なり、時には山田さんが焙煎したことのない種類の生豆を持ち込む人もいる。「すごく緊張しますね。プロファイルをたくさん考えたり。それもとてもいい勉強になります」と山田さんは話す。一方的に指導するだけでなく、互いから学び合うHOOPのコンセプトがよく表れているエピソードだ。


「バリスタが自分の抽出するコーヒーを焙煎しに来るという事がまだほとんどなく、そういった需要も今後増えていくといいなと思っています」と山田さん。HOOPの目的の一つに、コーヒーの生産・加工プロセスに関わる人々の物語、文化を共有し、その物語を持ったコーヒーを淹れる人を増やすことで物語を広げていく、というものがある。自分の好きな物を形にし、その物語を伝える手段を提供してくれるHOOP。ここをスタート地点として、日本の焙煎の裾野は今後も大きく広がっていくだろう。

 

HOOPのコーヒーとは


HOOPが生豆を選ぶ時の基準は、まずは自分たちが美味しいと思ったもの。さらに環境問題なり経済状況なり、それぞれが社会課題に対して何かしらの解決に寄与しているものを選ぶ。例えば現在扱っているコロンビアはフェアトレード認証されているもの、エチオピアはオーガニックのものなど。自分たちが買い付け焙煎する事で少しでも社会や地球が良くなるようなサイクルを作ろうとしているのだ。


「焙煎で意識している部分は二つあって、一つは生産地個性を最大限に生かすこと、二つ目は飲み物として美味しいコーヒーをつくることです。甘くて口当たりがよく、気がついたらカップが空になっている、毎日飲みたくなるコーヒーを目指しています。」山田さんがそう表現するHOOPの焙煎は、誰もを暖かく迎えるような、まさにHOOPらしい味わいだ。


産地ごとの特徴はしばしば他の食べ物や飲み物の味わいで表現される。彼らはそれを人々の性格とつなげ、優しさや華やかさなどといった特徴に合わせてオーダーメイドでその人を表現する味わいのブレンドを提供するサービスも行っている。イメージだけでブレンドを作るのではなく、コーヒーが持つバラエティあふれる香りや味わいに具体的にリンクさせ、そして産地ごとに大きく異なる特徴がある事の面白さをよりパーソナルに学べる楽しいサービスだ。

 

HOOPのこれから


「自分たちが何かを仕掛けたり発信したりするよりは、何かと何かをかけ合わせるような、媒体のような存在になりたい」と山田さんは話す。HOOPでは定期的にイベントを主催し、生産地に関する説明会やカッピングを行い、ゲストスピーカーを招く事もある。自分たちが強い個性をもったブランドとして成長したいというよりは、様々な形で橋渡しをし、あちこちで化学反応を引き起こすような存在になりたいのだという。「プラットフォームを作るという意識でやっています。主体は自分たちだけでなく、他の人たちも、皆で一緒に、という感覚です」今後はHOOPが注目している生産地であるキューバとの関わりをより強くしていくとともに、最終的には自分たちでコーヒーの生産にも関わっていく予定だ。


新しいコミュニティを日本で立ち上げたいー数年前、夢に溢れた彼らの心に強く印象を残した東海岸での光景。皆が集い、情熱を分かち合い互いに切磋琢磨する場。人と人がつながり、新しい可能性が生まれる場所。大阪のコーヒーシーンの課題でもある情報交換やスペシャルティコーヒー文化全体として大きなコミュニティを作る感覚を、HOOPはそのオープンな姿勢で楽しみながらクリアしていく。