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Darestore (仙台) : 2019年12月#クラスパートナーロースター

次にご紹介する#クラスパートナーロースターは、仙台・青葉区のDarestore(デアストア)。メルボルンでオーストラリアのコーヒーカルチャーに触れ、誰もが日常的に、気軽に、美味しいコーヒーを楽しめるような文化を仙台にも根付かせたい、そんな想いからオープンしたカフェ・ロースター。10年間の準備期間を経て2017年にオープンしたDarestoreは、仙台という大きな街自体のコーヒー文化構想を牽引する存在だ。オーナーの寺澤さんに、お話を伺った。


Darestoreができるまで

現在35歳の寺澤さんが「カフェをやろう」と決めたのは、今から10年ほど前。元々は柔道整復師の専門学校を卒業し、接骨院で勤務していたという。

「専門学校時代から、暇ができればカフェに行っていました。カフェで時間を過ごせば過ごすほど、カフェという空間をいいなぁと思うようになりました。接骨院で働きながら、学会に出席したり、業界を代表するような人たちとお話したりする機会もあったのですが、そうすればするほど、本当にやりたい事について考えるようになって。カフェをやりたいな、という気持ちがどんどん強くなりました。そういう意味では、就職してからようやく本当にやりたい事が見つかったような気がします」と寺澤さんは話す。


退職してからは、日本各地を訪問し、コーヒーショップを巡った。その中で寺澤さんの心に残ったのが、仙台の人気店、バルミュゼットだった。「カフェをやりたいんです」、そうオーナーの川口さんに相談すると、川口さんは親身なアドバイスと共に、「海外を見てきた方がいい」、そう言ってくれたのだという。「その時新しい視点をもらいました。バルミュゼットではまずは研修のような形で教えてもらいながら働いて、その後スターバックスでも働きました。二つの職場を通して、まずはコーヒーへの知識、そしてカフェをやるにあたっての基本的な業務や現場を回す経験、さらにメンタル面での訓練ができました」寺澤さんは感謝を込めてそう振り返る。


その後、飲食店を経営する上で食に関する広い知見も必要だと考えた寺澤さんはフレンチレストランでの勤務を始める。オーナーシェフは、スイスのレストランがミシュランスターを獲得した時に勤めていたという腕利きの料理人で、職人技術に触れる良い経験になったという。その後一旦退職し、川口さんとヨーロッパ旅行に行った寺澤さん。世界が広がる中で出会った人々から、海外生活やワーキングホリデー、そしてメルボルンについての話などを聞く中で、次第にメルボルンへの憧れが強くなったという。早速貯金を始めるべく選んだ次の職場は、イタリアンのピッツェリア。そこでもまた興味深い出会いがあった。シェフはナポリで修業した日本人で、海外で生活した頃の話を楽しく聞かせてくれたのだという。フレンチやイタリアンといった職場で様々な味を学んだ経験は、今でもちょっとしたメニューを出すときや、なによりコーヒーの味わいを表現するのにも役に立っている。幅広い経験が育んだ表現力だ。後にワーキングホリデービザを取得し、当時お付き合いしていた方と共にオーストラリアへ。二人はのちに結婚することになる。計1年10か月の滞在期間中、タスマニアや数々のファームを巡った後に、メルボルンでバリスタとして1年ほど経験を積んだ。2016年5月に帰国し、半年後の2017年1月に、Darestoreがオープンした。


メルボルンでの経験

メルボルンのカフェでは、一日300-500杯ほどコーヒーが売れることも珍しくない。そんな忙しく活気に満ちた環境で、寺澤さんは大いに刺激を受け、バリスタとしても大きく成長した。メルボルンのカフェの特徴は、フードメニューが充実している事。その流れを汲んで、Darestoreでは今でもチーズクロワッサン、自家製のミートソースを使ったホットサンドや自家製のグラノーラなどを提供している。

オーストラリアでは、日本人のネットワークにも大いに助けられたという寺澤さん。バリスタとしての初めての現場は、現在PRANA CHAI JAPAN代表の野村さんが働いていたカフェ、Balmains Brighton。働きながら技術を吸収した。その後、現在ANY B&B+ COFFEE代表の満吉さんがヘッドバリスタを勤めていたAddict Food & Coffeeというカフェで勤め、それぞれの場所で充実した経験を積んだ。大きく世界へ広がった視点も、身につけた技術も、そして数々の素晴らしい出会いも、今へと繋がる大切な宝物だ。


石山さんとのパートナーシップ

Darestoreを語る上で欠かせない人々のうちの一人が、共同経営者として立ち上げをつとめ、現在は焙煎を担当する石山さんだ。出会いは、寺澤さんがフレンチで働いていた頃。バルミュゼットで頻繁に行われていたカッピングに欠かさず参加しており、その場で知り合ったのが石山さんだった。石山さんは当時ネルソンコーヒーというコーヒーショップですでに10年ほど経験を積んでおり、ネルソンコーヒーが仙台駅前にコーヒースタンドをオープンした時には店に立ってコーヒーを淹れていた。そこへ寺澤さんが足しげく通うようになったのだ。

「メルボルンにいる時に、帰ったらお店をやろうと思っていて、どうしようかなと考えていた時にすぐに石山の顔が浮かびました。経験も技術もあるし、働いているのも見ていて、さらに自分とはまた違うタイプでもあるので、一緒にやったら合うだろうな、と思ったんです」と寺澤さんは話す。石山さんもちょうど独立を考えていた時期だったこともあり、打診を前向きに受け止めてくれたという。メルボルン滞在中からメッセンジャーなどでやり取りを続け、コンセプトなどの検討を進めた。


Darestoreのコンセプト

「メルボルンのカフェって、皆が日常的に使う場所で、朝早くから開いているんです。学校に行く前に親子で来たり、会社を抜け出してコーヒーを買いに来たり、そんな日常の色々なシーンで生活に溶け込んでいる。そんな場を仙台に作りたい、そういう気持ちがまずありました」と寺澤さんはDarestoreのコンセプトを説明する。

石山さんも、前職で「スペシャルティコーヒー」と言うと飲みに来た人が構えてしまう事があり、そのハードルを下げたいと考えていたのだという。バックグラウンドの異なる二人だが、人々が気軽に美味しいコーヒーを楽しめる場を提供する、そんな構想でしっかりとタッグを組む事ができた。


オープン当初、仙台には個人経営のカフェは他にもいくつかあったものの、存在感は大手チェーンの方がまだ強く、それらの立地の良さも手伝って客入りも比較にならなかったという。個人店はあくまでも「知っている人」、「好きな人」が立ち寄る場所。メルボルンで寺澤さんが目にしていたのは、小規模の個人店にはいつも人があふれ、チェーン店には観光客しかいないという真逆の環境だった。Darestoreの挑戦は、仙台という地で、個人店がもっと輝ける環境を整える事だ。できるだけ様々な客層に対応できるよう、まずは営業時間を朝7時からとし、カフェ営業終了後はバー営業として11時までオープンする形でスタートした。忙しい人も、好きな時間に来られるための工夫だ。「フードメニューも充実させました。メルボルンのカフェにはフードメニューが多くて、休憩、打ち合わせ、食事など様々なシチュエーションで使えるのも魅力です。オープンした頃は、いいな、と思ったものを全部取り入れてチャレンジしていました」、そう寺澤さんは忙しい日々を振り返る。やりたい事は尽きないが、スペースや自分たちの仕事量とのバランスも重要だ。調整を経て、2年目からは8時から18時までの営業とし、メニューもフードメインから徐々にコーヒーにフォーカスした内容に変化させている。


Darestoreがよりコーヒーに特化した店へと変化できたきっかけは、2019年の5月からチームに加わった八代さんの存在が大きかったという。メルボルンやベルリンでヘッドバリスタなどとして活躍し、計5年ほどの海外経験を積んだ彼の加入により、Darestoreはさらなるパワーアップを遂げた。


オープン当初からキッチンを切り盛りしていたのは、中学時代からパティシエを目指していたという奥様だ。彼女の作り出すお菓子やフードにはリピーターも多く、メルボルンスタイルのフードメニューなども特に話題を呼んだ。Darestoreをコーヒーショップとして発信する方向に切り替えてからは、その多彩な才能を活かし、パッケージデザインやソーシャルメディアでの発信を担当している。


Darestoreの焙煎

Darestoreで使用している焙煎機は、韓国メーカーのPROASTER。求めていたコストパフォーマンスとサイズ感に合うだけでなく、寺澤さんはメルボルンで、石山さんはアメリカでそれぞれ飲んで好印象を持ったコーヒーに使用されていた焙煎機ということで、白羽の矢が立った。Darestoreの味わい全てに通ずる方針は、「はっきりと個性が感じられるコーヒー、そして綺麗さ、甘さ、酸などのバランスが取れていること」。輸入業者については、産地との関わりを大切にしており、高品質の商品を扱っていることを基準に選んでいる。


コーヒーそれぞれのキャラクターが感じられる焙煎度合いを探し、スモーキーさや苦さが出ないように調整を重ねているというDarestoreの焙煎。焙煎度合いは浅煎りから中浅煎りまでに限っており、ラインナップは常時4−5種類、ローテーションは3ヶ月に1回ほど行う。個性が異なるコーヒーを揃え、選ぶ楽しみも増すように工夫しているのだという。その中でも、「コーヒー飲みたいな、と思った時に皆がイメージする味わいに近いバランス」で、一番落ち着く味だと感じるブラジルは一年を通して販売している。いつでも安心してほっと一息つける場所、そして楽しく新しい出会いもある場所。コーヒーのセレクションを聞いただけでも、Darestoreの居心地の良さが伝わってくる。


将来への展望

仙台のコーヒーカルチャーの特徴は?と尋ねると、まずは「カフェ同士の交流があること」と寺澤さんは言う。コーヒーカルチャーの発展には、横のつながりや業界全体の盛り上がりが欠かせない。力を合わせていける環境はコミュニティの大きな強みになるだろう。

消費者に関しても、特別、「スペシャルティコーヒー」として確立しているものはまだないけれど、Darestore一つ見ても、年代問わず様々な人々が思い思いにコーヒーを楽しむ様子には、これからの仙台のコーヒーシーンの行き先の明るさを感じるという。


「Darestoreの短期的な目標としては、焙煎所を作ったり、焙煎量も増やしていきたいと思っています。ただ、自分たちだけが大きくなっていくというよりは、もっとたくさんの人たちに美味しいコーヒーを飲んでもらって、仙台のマーケット自体を大きくして、全体として仙台のカフェやコーヒーの産業が栄えていくのが一番だと考えています。コーヒーは家で飲む人も多いですし、スペシャルティコーヒーを家で淹れる楽しさをもっと発信するために、ワークショップも開催しています」と寺澤さんは説明する。


同じ将来を見つめながら、スタッフがそれぞれに才能を開花させ、仙台の人々の暮らしに美味しいコーヒーを届け続けているDarestore。これからも仙台を代表する存在として、人々の生活に豊かな香りをもたらす事だろう。