タッチパネル操作、オート焙煎モード、省エネ、排気ゼロ・・・新世代の焙煎機、ローリングって?Head Roster Kosukeにインタビュー
2018年にTim Wendelboeが導入したことでホットな話題にもなり、ここ数年で日本国内でも導入するコーヒーロースターが増えている、ローリングスマートロースト(Loring Smart Roast)の焙煎機。
業務用の焙煎機といえば、富士ローヤル、プロバット(Probat)やギーセン(Giesen)などが有名どころ。ロースターさんによっては、プロバットやギーセンの中でもヴィンテージの型にこだわって取り寄せた焙煎機を使用されている方もいらっしゃるなど、コーヒーの味わいを決める上で大きな役割を果たす焙煎機。それぞれの焙煎士さんが理想の味わいを実現するために厳選する片腕のような存在です。
地域や季節によって、また生豆の状態によって日々綿密な調整が必要な、まさに五感をフルに生かした職人仕事であるコーヒーの焙煎。さらに商品として販売する場合、生豆のポテンシャルを最大限に引き出すだけでなく、安定した品質と味わいを再現しながらの量産も求められます。ローリングの焙煎機は、そんな責任を日々引き受ける焙煎士さんのさまざまなタスクを自動化・効率化してくれる機能を備えた完全熱風式のスマートロースター。
今回の記事では、ローリングの焙煎機についてと、実際にローリングを使ってみた感想をHead Roaster Kosukeにインタビューしましたのでご紹介します。
ローリングスマートローストの誕生
ローリングスマートローストが生まれたのは、アメリカの北カリフォルニア。創業者のMark Loring Ludwig氏が、自身が営むコーヒー事業の効率化を追求し、食品加工機器の知識を応用し、5年の歳月をかけて、煙を出さずに焙煎ができる世界初のマシンを開発しました。
コーヒーを焙煎すると、副産物として不快な香りを伴う排気が生まれます。この空気を焼き切るため、アフターバーナーという機械を焙煎機に取り付けて排気の処理を行う事が推奨されるのですが、ローリングは焙煎のための加熱から排気の処理まで、一つのガスバーナーで行えるよう設計されているため、アフターバーナーが不要で、不快な排気や大量のCO2、余分な光熱費も発生しません。
「シングルバーナー」と説明されるこの仕組みは特許も取得しており、多機能化・効率化、CO2排出量減少により、設備費用や燃料、環境への影響を少なくできる画期的なアイデアでした。
ローリングの強み
ローリングの焙煎機でまず目を引くのが、大きなタッチパネル。感覚的な操作ができ、内蔵のコンピューターが生豆の重さ、量、焙煎時間などの焙煎プロフィールや仕上がりまでのデータを自動的に記録・管理します。
焙煎プロフィールがあらかじめ決まっている場合や繰り返し大量に焙煎する時に便利なのがオート機能。予熱、生豆の投入から焙煎、冷却までを自動で行います。コンピューター制御による運転で、焼きムラの少ない均一なバッチが焙煎できます。焙煎した豆を密度と重さを検知しながらバキュームで吸い上げ、石などの不純物を自動的に取り除いてくれるdestonerというアタッチメントも魅力的。
無駄を省き、衛生的でメンテナンスも簡単なステンレスのすっきりとしたデザイン、アフターバーナーが不要になることで焙煎所のスペースも広く使える省スペースもローリングの売り文句。お店のスペースと、ロースターさんの時間、そして各種コストをできる限り無駄にせず、その分コーヒーを楽しみに来てくれる人々へのサービスに回して欲しい。ローリングの焙煎機の機能やデザインには、そんな創業者の願いが込められているそう。
ローリングで焼いたコーヒーの味って?使い勝手は?
ここで気になるのが、実際にローリングで焼いたコーヒーってどんな味?という点。ロースターさんによっては、エグ味が少なくクリーンな印象、と表現されるローリング焙煎の実体験を、Head Roaster Kosukeにインタビューしてみました。
(kurasuでは昨年ローリングを導入)
− これまで使用されていたギーセンからローリングに移行して感じる違いとは?
「まずはQC面でより安定したことです。焙煎はどうしたって多少ブレます。ブレる前提なら、焙煎する回数は少ないに越したことはないです。なので、ギーセンをメインに焙煎していた頃と比べると、よりバッチ間の差のないものを提供出来るようになりました。あとは、シンプルに時間が出来たことで、格段にプロファイルの完成するスピード、そして完成度が上がりました」と話す良原さん。
ギーセンとローリングの焼かれ方のイメージを、イラストで表現してくださいました。
「焙煎の進行具合は水分の損失率で測ります。(※浅煎りの方が、水分が損なわれないので、数値は低くなります。)例えば、同じ11%の水分を飛ばしたいと思っても、豆内部の焼かれ方に上記のようなイメージ差が出来ます。ギーセンでは、芯の部分に焼けていない部分が残ってしまうので、必然的に少し長め、焙煎度合いで言うと、ほんの少し深め(12%くらい)に焙煎にする必要が出てきます。味わいで言うと、長く焼く分、酸味<甘みの傾向が強くなる。対し、ローリングは表面と芯の温度差が少なく、目に見える焙煎度合いと内部の進行具合がほぼほぼ同じなので、より浅く焼くことが出来ます。水分のロス値で言うと、約0.5~1%くらい多めに残すことが出来ます。」とのこと。
− 焙煎の違いは味にどう影響する?
「酸味=甘みの傾向。味わいにより一体感があります。あと、明確な違いとしては、エージングの進み具合です。正直、ここは確かにローリングの方が焙煎日から考えた場合、美味しい味わいが長く続きます。
が、飲み頃になるタイミングもギーセンよりもかなり遅いので、スウィートスポットの長さ自体はそんなに変わらないのかな、と感じてます。今のところ。でも、焙煎日から考えた場合、より持続するのは間違いないと思います。焼かれ方に関して、なぜそういう違いが生まれるのか科学的なところは分からないですが、ギーセンが半熱風式でローリングが完全熱風式、この違いにあるんじゃないかと思います。」
再現性を高め、排気やメンテナンス、データ記録管理など、可能な限りのタスクを効率化することで、焙煎する人が理想の味わいの追及に集中して向き合う環境を作ってくれるローリングの焙煎機。実際の焙煎でコーヒー豆の魅力を引き出すのはあくまでも職人の力の見せ所、そしてそれをサポートする、環境への影響も配慮された最新技術。自然の恵みと人間の技術とが合わさって生まれるスペシャルティコーヒーそのものを表すような、新世代のアンサーと言えるのではないでしょうか。
現在日本では全国で50台ほど導入されているというローリング。導入しているロースターさんを見つけたら、ぜひ注目してみてくださいね!
関連記事「焙煎機の違いについて(熱風・半熱風・直火)
A cup of KOHII with love
(編集:Aya)
参考文献:https://loring.com/
https://dcservice.co.jp/smartfactory/
SNS紹介文:
2018年にTim Wendelboeが導入したことでホットな話題にもなり、ここ数年で日本国内でも導入するロースターが増えている、ローリングスマートロースト(Loring Smart Roast)の焙煎機。地域や季節、また生豆の状態によって、日々綿密な調整が必要な職人仕事であるコーヒーの焙煎。さらに商品として販売する場合、生豆の魅力を最大限に引き出すだけでなく、安定した品質と味わいを再現しながらの量産も求められます。ローリングの焙煎機は、そんな責任を日々引き受ける焙煎士さんのさまざまなタスクを自動化・効率化してくれる機能を備えたスマートロースター。今回の記事では、ローリングの焙煎機についてと、実際にローリングを使用しているロースターさんに使ってみた感想をお伺いしご紹介します。
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