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エルサルバドル・オリジントリップの記録 by Ayaka

エルサルバドル・オリジントリップの記録 by Ayaka

今年初め、KurasuでCafe Operations Coachを務めるAyakaがエルサルバドルを訪問する機会がありました。

生豆の買い付けを目的としたものではなく、収穫期というタイミングで現地を訪れ、生産者やコーヒーが生まれる環境への理解を深めることを目的としたオリジントリップです。

Ayakaはスターバックスでコーヒーのキャリアをスタートし、その後オーストラリアでバリスタとして経験を積みながら技術を磨きました。2016年には、Kurasu初の店舗であるKyoto StandのオープニングスタッフとしてKurasuでのキャリアをスタートさせました。

その後、店舗マネージャーや代表社員を経験し、現在は長年の現場経験を活かしながら、Cafe Operations CoachとしてKurasuらしい店舗体験の向上やホスピタリティの強化を担っています。

バリスタだった時代から、産地に関心があったAyakaですが、実際に現地を訪問するのは今回が初めて。「バリスタ人生で、一度は農園に行ってみたい」、そしてそこで体験したことをお客様に伝えたい、そんな気持ちで今回のオリジントリップに参加しました。

オリジントリップ企画について

今回のオリジントリップを企画してくれたのは、Ayakaの同志であり、公私ともに親交の深い友人でもある門川さん。
門川さんは2018年から2020年まで、JICA青年海外協力隊としてエルサルバドルのコーヒー産業支援に従事。チャラテナンゴ地域のサンタロサ農園に住み込みながら、生産者支援や地域のコーヒープロモーション活動に取り組んでいました。

その経験を通じて、エルサルバドルの土地、人々、そしてコーヒーとの強いつながりを築き、帰国後は京都でCOYOTEを立ち上げました。現在はカフェ運営に加え、インポーターとしてエルサルバドルのコーヒーを日本へ届ける活動も行っており、Kurasuをはじめ多くのロースターへコーヒーを紹介しています。

今回の訪問では、門川さんがエルサルバドル滞在中に生活していた農園をはじめ、長年の信頼関係を築いてきたパートナー農園や精製所を訪問しました。

実際に収穫作業の体験やチェリーの状態の見極め、精製所で行われているプロセスや作業内容を間近で学ぶことで、普段カップの中で感じている味が、どのような現場から生まれているのかを理解することが今回の訪問の目的です。

また、コーヒーだけでなく、エルサルバドルという国の文化や背景、人や暮らし、産業としてのコーヒーを知ることで、味だけにとどまらない多角的な視点でエルサルバドルのコーヒーを考えるきっかけを作ることも、今回の大きな目的のひとつでした。


滞在期間は移動を抜いて5日。毎日が新しい体験と学びの連続で、現地で吸収したことや感じたことをAyakaが日記形式で記録してくれました。

今回は、その記録に加え、出発前の準備や、訪問を通じて経験した心境の変化や新たに生まれた目標について振り返ります。

出発まで

「門川くんから『一緒に行く?』と誘ってもらったタイミングから、スペイン語の勉強を始めました」と話すAyaka。

子育てをしながらということもあり、机に向かってまとまった時間を確保したり、講義形式で学んだりするのはなかなか難しい状況だったそう。

そこで、自分に合った方法としてポッドキャストを活用することに。お気に入りの番組を見つけ、移動中や家事の合間に毎日繰り返し聞き、実際に声に出しながら勉強を続けました。

まずは基礎的な文法や表現を学び、「まだ話せないけれど、なんとなく法則が見えてきた」という段階まで進めました。その後は、実際に現地で使うことを想定したスペイン語に絞って学習しました。
準備したのは、緊急時などの基本のフレーズや自己紹介、家族のこと、そして「ここに来れて嬉しいです」「美味しいコーヒー豆を作ってくれてありがとう」など気持ちやリスペクトを表現するものなど。
それらを渡航前に小さなノートにまとめ、オリジントリップの期間中は常に持ち歩いていました。

また、農園訪問が決まってからは、店舗のバリスタやKurasuのチームメンバーに
「何か生産者さんに聞いてみたいことはありますか?」とヒアリングを行いました。

もちろん、すべての質問を現地で聞くことはできませんでしたが、このやり取りを通じて、消費者にまだ届いていない情報や、皆がどんなことに興味を持っているのかを知ることができました。

さらに、訪問スケジュールを門川さんから共有してもらってからは、訪問先についてできる限り調べました。
どんな場所なのか。どんな人たちがいて、どんな活動をしているのか。少しでも理解した状態で現地に入りたいという思いからです。

その中で、1日目に訪問予定になっている「Finca San Antonio de Alejandría」だけは、どれだけ調べてもほとんど情報が見つかりませんでした。

もしかすると名前が違うのかもしれない。あるいは農園ではないのかもしれない。そんなことまで考えていたというAyaka。

しかし実際に訪れて、その理由がわかりました。
この農園は、それまで国外への販売をほとんど行っておらず、主に国内で栽培・焙煎を行い、自社店舗や近隣のカフェへ販売していました。
つまり、Kurasuのような国外のバイヤーやコーヒー関係者にとっては、まだほとんど知られていない農園だったのです。

そして今回、門川さんを通じて初めて日本へコーヒーが届くことになりました。
事前に情報が見つからなかったことも含めて、現地に行かなければ知ることのできない発見のひとつでした。

滞在スケジュール

Day 0: 日本出発!

成田空港からロサンゼルス経由でサンサルバドルへ。飛行機が遅れてロサンゼルスで数時間過ごすことになったトラブルがありつつ、カフェに行ったりとリフレッシュに切り替えて、無事エルサルバドルへ。

Day 1:Finca San Antonio de Alejandríaで農園訪問

初めて実際に目にする農園の様子。そこで作業し暮らす人々が日々食べているものを一緒にいただき、食文化も体験しました。

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Day 2:行政機関訪問、市内ロースタリー訪問、観光

エルサルバドルのコーヒー産業を統括・支援する政府系の行政機関ISCを訪問し、エルサルバドルのコーヒー産業全体像を知る貴重な機会をいただきました。国内の様々なリージョンや品種について教えてもらいながら、エルサルバドルのコーヒーを実際にカッピング。
その後は、ファーマーズマーケットや焙煎所を訪問しました。

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Day 3:旧市街訪問、現地カフェ

スペイン植民地時代〜20世紀初頭の建築が並ぶ旧市街で、国の歩んできた歴史を感じる日。中国政府の支援によってできた図書館や、景観保護のための取り組みや治安の変化など、国政や時代の変化を反映する街並みを散策しました。

スターバックスやローカルのカフェも巡り、それぞれの場所でエルサルバドル産の豆が誇りを持って提供されていることを改めてまぶしく感じた1日でした。

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Day 4:ラウルさん、ハイメさんの農園訪問

4日目は朝5時に出発。首都サンサルバドルから車で約2時間かけて、馴染みのあるチャラテナンゴへ向かいました。
門川さんがJICA時代に働いた焙煎所を運営するラウルさんの農園にうかがい、フレッシュなパカマラチェリーを食べさせてもらったりしながら、標高1,440m〜1,650mの山の斜面に位置する農園を見学しました。
その後はKurasuでも数年にわたり取引を続けているドン・ハイメさんのもとへ移動。自宅併設の精製所を見学し、非常に丁寧なドライの工程を見せていただきました。

>4日目の記録はこちら

Day 5:アントニオさん、オクタビオさん、レネさんの農園訪問

最終日には、Kurasuでも以前取り扱っていたものの、品質の不安定さで現在はお取引をしていないアントニオさんの農園を訪問。「なぜ品質が安定しないのか?」その背景を実際に現地で伺ってきました。そこでわかったのが、コーヒー農家をとりまく厳しい現実や、アントニオさんの信条、そしてこれまであまり意識してこなかったウォッシュドプロセスの環境負荷やEUの輸入規制など。

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振り返って

帰国後、社内で報告会を開いてくれたAyaka。たくさんの写真や動画と共に、現地で感じてきたことを生き生きと共有してくれました。知識として知っていることと、実際に目にすることとの違いや、チェリーの瑞々しさや精製所での景色、農園での食事など、新鮮な感動が聞く人にも伝わってくるとても良い報告会でした。

最後に

今回、Ayakaの旅の記録を記事にまとめるにあたり、改めて体験を振り返ってもらいました。


"出発前は、「人生で一度コーヒー農園に行けたら嬉しい」という気持ちが強くありました。
18歳からコーヒーに関わってきた中で、一度でいいから自分の目で農園を見てみたい。そんな憧れの存在が生産地でした。
実際に現地を訪れることができ、その夢は叶いました。ただ、現地で感じたことは想像していたものとは少し違いました。コーヒーは農園だけで作られているわけではなく、本当に多くの人の専門性と労力の積み重ねによって成り立っているということです。

出発が近づくにつれて、「自分はこの経験をちゃんと受け止められるだろうか」「見たことや感じたことを言葉にできるだろうか」という不安もありました。

実際に訪れてみると、その不安以上に、自分が知っているつもりになっていたことの少なさを痛感しました。
普段私たちは生豆を受け取り、焙煎し、お客様へ提供しています。

しかし、その前には収穫、選別、精製、乾燥、保管、脱穀、輸出といった数えきれない工程があり、それぞれの場所で多くの人が品質を支えています。
「コーヒーは農園で作られる」というより、農園から輸出まで、ひとつのチームとして品質を届けている。そんな感覚へと変わりました。

今回特に印象に残っているのは、生産者さんに「一番大切なことは何ですか?」と質問した際の答えです。
返ってきた言葉は、とてもシンプルでした。
「一番大切なのは農園。」
どれだけ高価な設備があっても、どれだけ高度なプロセスを行っても、良い果実がなければ意味がない。逆に、素晴らしいチェリーがあれば、シンプルなナチュラルプロセスでも良いコーヒーを作ることができる。もちろん設備や精製技術も重要です。
しかし、それらは果実が持つポテンシャルを最大限引き出し、それを維持して届けるためのもの。その言葉を聞いて、自分たちの手元に届くまでに存在する「見えないバトン」の重みを改めて感じました。

今回の訪問で、自分の中で大きく変わった視点もあります。それは、品質だけではなく、持続可能性についても考えるようになったことです。
これまでは、

  • 美味しいか
  • クリーンか
  • どんなフレーバーを感じるか

という視点でコーヒーを見ることが多かったと思います。

しかし現地では、

  • 水資源の問題
  • 排水処理の課題
  • 気候変動
  • 深刻な人手不足
  • 設備投資の負担

など、生産者が向き合っている現実にも触れることができました。その結果、プロセスについても見方が変わりました。以前は「この農家さんはハニーなんだ」「ナチュラルなんだ」という受け取り方でした。

しかし今は、なぜそのプロセスを選んでいるのか。その背景に興味を持つようになりました。ナチュラルやハニーは単なる味づくりの選択肢ではなく、環境や地域事情、人手や設備の状況を踏まえた選択でもあることを知りました。

訪問前は、一度農園を見られたら十分かもしれないと思っていました。
自分の中では、農園訪問はひとつの到達点のような存在でした。
ところが実際に訪れてみると、その感覚は大きく変わりました。
エルサルバドルを知れば知るほど、

他の生産国はどうなのだろう

土壌の違いはどのように味へ影響するのだろう

生産者の考え方は国によってどう違うのだろう

同じ品種でも国が違えばどうなるのだろう

そんな疑問が次々と生まれてきました。
私にとって今回の生産地訪問はゴールではなく、新しいスタートだったように感じています。

これからは、土壌や気候が味に与える影響、プロセスと環境負荷の関係、そしてコーヒー産業全体の持続可能性について、もっと深く学んでいきたいと思っています。
また、生産者がどんな思いでコーヒーを作っているのかを知るだけでなく、自分たちがその価値をどのようにお客様へ伝えていくのかについても考え続けたいと思います。

今回改めて感じたのは、コーヒーは単なる嗜好品ではないということです。
土地、人、歴史、文化、経済、環境。
さまざまな要素が重なり合い、一杯のコーヒーになっている。
まだうまく言葉にできていない部分もたくさんあります。
それでも、今回得た学びを報告会や日々の接客、社内での対話を通じて少しずつ整理しながら、自分なりに深めていきたいと思います。"

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