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今月のKurasuパートナロースターは、熊本のGluck Coffee Spot。Kurasuサブスクリプションへの参加は2021年以来。ここ最近、日本のスペシャルティコーヒーシーンが躍進している中で、熊本のコーヒー文化が特に盛り上がっているとの話を耳にする。今回は、多くのコーヒーファンを引き寄せる熊本の魅力、そして彼らがコーヒーを介して届けたい想いについて、オーナーの三木さんとバリスタの竹内さんに質問した。 「熊本の魅力は?」と伺うと、自然と都市の距離が近いと答える三木さん。熊本市は都市としてそれなりの規模がある一方で、車で1時間以内の距離に山があり、海もある。豊かな自然に囲まれ、美味しい食材に恵まれた土地柄に魅かれ、熊本に残る若者も多いそうだ。バリスタの竹内さんもそのうちの一人。 「三木さんに声かけらことがきっかけに、常連さんからバリスタへ。気が付けば5年目になっていた」と話す竹内さん。彼女はGluckでは、挑戦できる環境の中で、意志を持って働くことができるので、ベンチャー企業で働く感覚に近いと振り返った。今は、バリスタをしながら、生豆商社であるSYU・HA・RIのグリーンの仕事にも携わり始めている。Gluckで働き始めた頃は、コーヒーにまつわる文化に興味があったが、今やコーヒーの素材、そのものへ深くのめり込んでいる最中。そんな竹内さんは、「コーヒーに関わる仕事は多岐に渡るので、エネルギーを注げるきっかけの循環をつくる一員になりたい。」と笑顔で話す。きっかけの循環。熊本のコーヒー文化が盛り上がった背景の元を言えば、同世代とのつながりの深さがあるようだ。修行から独立というパターンよりは、同世代同士で切り盛りしていく感覚に近い。だからこそ、多様な価値観が混ざり合い新しい文化が生まれ、根付く。 オーナーの三木さんが思い描く未来に、大事なキーワードも循環である。お客様がコーヒーに興味を持ち、生活の中で溶け込むコーヒーを楽しんでもらえる。それは結果的に安定した量を買い付け、生産者と長年の密接な関係を持つことにつながるのだ。「日々の積み重ねを通して、この循環の輪を大きくしていきたい。」とのこと。
今月のKurasuパートナロースターは、沖縄市にある豆ポレポレ。「ポレポレ」はスワヒリ語で 「ゆっくりゆっくり」という意味を持つ。沖縄では、日本本土に比べて時間がゆっくり流れ、沖縄の独特な時間感覚を指しウチナータイムという言葉があるくらい。お店の名前に「ゆっくりとしていこう」という想いを込めたと穏やかに話すオーナーの仲村さん。だが、実は仲村さんは、2018年イタリア・リミニで開催された焙煎の世界大会(WCRC)で2位を獲得した腕前のロースターだ。 「コーヒーをもっと学びたい」というまっすぐな動機で挑戦し始めた競技会。限られた時間の中で、コーヒーに向き合うという環境を自らつくる意識をされたそうだ。今よりコーヒーに関する情報が少なかった頃、手探り状態で始め、最初は予選敗退。しかし、毎年、挑戦し続けるうちに、仲間でありライバルのような勉強会仲間も増えて、熱意がより高まった。勉強会仲間のうちで一人、二人と大会で手応えある結果を残し始める中、仲村さんも日本優勝後、世界大会へ出場、見事に準優勝をされた。世界大会を終えて、結果に対しては嬉しさと悔しさの感情が両方ある。しかし「なぜ競技会に挑戦したいか」と最初の動機を振り返ると「もっと美味しいコーヒーを出したいから、もっと挑戦したい」というシンプルな答えに行きついた。「もっと」を追及し続けたい、ただそれに尽きるのだ。少し余談として、ここ数年で、沖縄のコーヒーカルチャーも盛り上がっている。沖縄は土地柄の性質上、コーヒーの自然栽培ができるので、コーヒー農家さんも増えているようだ。地元民も移住者も混ざった島、沖縄だからこそ、コーヒー文化の表現が自由である。深煎りも浅煎りも、美味しければ良いという感覚で、コーヒー文化のグラデーションを体感できる魅力のある場所だ。 最後に、仲村さんは、まだまだもっと美味しいコーヒーを追及したいと話す。次の挑戦に向けて、プレイヤーとしてありながらも、次世代の挑戦も応援しているとのこと。最初、競技会に参加するときは、世界が遠いように見えた。しかし、本当はそれほど大きな差異はないのかもしれない。尻込みせず、近づいてみると、実は横一線。一歩踏み出す勇気を持ち、努力を積み重ねれば、コーヒーに携わるすべての人に可能性がある。楽しみながら、ゆっくりと挑戦してみよう。
トークテーマ:『おいしいコーヒーをより多くの人に楽んでもらうために』 日時: 7/15(土) 19:00~21:00 場所:Kurasu Ebisugawa定員:20名(要予約)料金:2,000円(川野さんがサーブするコーヒー込み) ※お支払いはイベント当日店頭にてお願いします。 LIGHT UP COFFEE x Kurasu 初のトークイベント! コーヒー業界の中でも多方面で活躍されているLIGHT UP COFFEEの川野さん、Kurasuの代表のYozoさん。二方を招き、おいしいコーヒーをより多くの人に楽んでもらうために” というテーマで話し合って頂きます。 一人でも多くのお客様が感動できるコーヒー体験をどのように生み出すか。 必要なのは、コーヒーのクオリティやプライシングへのこだわりから始まります。 さらに、多くの人にコーヒーが飲まれることで、生産地にどのような影響を与えられるか。今回のトークセッションは、川野さんとYozoさんが思い描く Seed to Cup(種からカップまで)を探る対談です。参加者の皆さんには、川野さんが一人ひとりコーヒーをドリップします。また、当日は川野さんとYozoさんに質問できる時間もあります。 ご予約はこちらのGoogleFormから!! なかなかない貴重な機会、ぜひ皆さんご参加ください 一緒に美味しいコーヒーについてじっくり考えてみませんか?
今月のKurasuパートナロースターは、都内のLIGHT UP COFFEE。LIGHT UPという言葉には「おいしいコーヒーで、毎日を明るく照らす」というオーナー、川野優馬さんの想いが込められている。大都市、東京の中でもカルチャーが盛んな街、吉祥寺と下北沢に店舗を構え、直近では、新しく導入したProbat UG22と共に焙煎所を新設。それだけではない。インドネシアのバリ島を拠点にコーヒーの精製や生産にも挑戦され、オープンツアーの開催、それらを含む活動すべてを等身大のままYoutube、ポッドキャストで配信し、コーヒーファンを巻き込むのがLIGHT UP COFFEEの、川野さんのすごさである。このように多方面で活躍されている川野さんが照らしたいコーヒーシーンの未来へ迫りたい。 最近、川野さんがコーヒーに関して自問自答している二つのクエスチョン。 一つ目に量と質のバランス。コーヒーは素晴らしい飲み物である。コーヒーは、虚構の情報が飛び散る社会の中で、目の前の一杯、リアリティのある体験を届けてくれる。美味しいコーヒーは、ぬくもりを体に馴染ませ心を穏やかにする。こんな素敵なコーヒーをどのようにして多くの人に伝えられるのか。 問いの答えは、美味しいコーヒーを飲める頻度を高めること。スペシャルティコーヒーが大量生産・大量消費に対する「量から質への転換」の意味合いで始まったカルチャーであれば、今は美味しさを追及した次元でどのようにして「質から量へ転換」していくか考える必要がある。コーヒーを楽しむファンを増やし、文化を盛り上げ、生産者とも密接なパートナーになって行きたい。 二つ目はコーヒーにおいて最も大事なことは人であるという原点。川野さんがコーヒーを好きになったきっかけであり、人生の中で忘れられない一杯に出会えたFuglen Tokyoでの原体験に触れる。コーヒーにはまりたての頃、ノルウェーチャンプオンのTIm Wendelboeのケニアを飲んだ時、クリーンでフルーティーな味わいに驚きながらも、その場にいたFuglen Tokyoのオーナー、 小島さんの説明と対話があったからこそ、コーヒー、そのものへの好奇心が増した。振り返るとコーヒーに関わる全て、バリスタとの関係性、お客様同士の会話、作り手の気持ちなど、コーヒーは、ただのモノ売りだけではなく「コーヒーを通して人がモノへ込めた意志を伝えている」という感覚に陥ったそうだ。 最後に「コーヒーについてもっと知ってもらうのは、まずはコーヒーを気軽に飲んでもらってから」と話す川野さん。これからもLIGHT UP COFFEEは、枠と幅を飛び越えて、コーヒーを楽しく伝え続けていくだろう。みんながコーヒーをもっと好きになりますように。コーヒーに携わるすべての人が明るく照らされますように。
今月の#クラスパートナーロースターは、山梨県甲府市の寺崎COFFEE。誇張も虚飾もなく「地元に愛されるまちのコーヒー屋さん」という言葉が似合います。街角のコーヒー屋さんとして、長年、コーヒーと人と向き合ってきた寺崎さんのものがたりを少しだけ紹介。 店主の寺崎さんは大学進学をきっかけに山梨に初めて触れた。コーヒー業界に興味を持ち就職活動をしたものの、寺崎さんが想う仕事は見つけられず。一度、物事を広く見るためにイギリスへ留学した。そして24歳の頃、再び山梨に戻った時、カフェ店主をやらないかという誘いをきっかけにお店を始める。親戚もいない山梨で、若さの勢いではじめたお店。当然のように最初はお客様も少ない。しかし、お店を続けているうちにお客様からも身内のように接され、地域に溶け込んでゆくのが嬉しかったそうだ。 それから、2007年。ワールド・バリスタ・チャンピオンシップの開催地が東京だった年。その年に寺崎さんはチャンピオンJames Hoffmannのプレゼンに出会う。世界のコーヒーの行く末、初めて触れた産地特性というスペシャルティコーヒーの概念、浅煎りという焙煎へのアプローチ。コーヒーの選択肢が、喫茶店、もしくはスターバックスしかない中で、今までのコーヒーに対する概念が覆される経験だったそうだ。 今回、寺崎さんがお届けする豆は、エチオピアとホンジュラスの2種類。数年前、エチオピアの産地へ訪れた寺崎さんは、現地で山梨と近い豊かさを感じた。それは自然の恵みに囲まれた、心落ち着く豊かさ。エチオピアから日本・甲府は遠い海の向こうの小さな街。この小さな街角で飲む一杯のコーヒーから広がる世界観と想像力を大事にしています。 もう一つは、ホンジュラスの代表的な生産者、マリサベル・キャバレロさんと夫であるモーゼス・ヘレーラさんのコーヒー。彼らは持続的に美味しいコーヒーをつくれるよう大いに注力しています。新しい品種を植えたり、農園の土壌をよりよくするために全力をつくすなど、彼らが環境の可能性を信じる姿勢は、コーヒーを味わうと感じ取ることができるでしょう。 最後に、近年は日本のコーヒーシーンも急速に発展し、バリスタに憧れ、コーヒーを志す若者も増えています。寺崎さんは「コーヒー業界の若い人材に、素敵な業界だと思ってもらいたい」と想いを語られていました。メディアが発達し、届く情報は多いけれど、はじめてコーヒーに、カフェに、心が動いた瞬間はいつか。その一瞬の純粋な動機を、リアリティある原体験を、長く大事にしてほしいとのこと。「心の動機に世代も、国籍の壁もなく、みんな等しい」と穏やかに話す寺崎さんに、知らぬ間に輪を広げ、境界を超えて、笑顔を増やしていく力を感じました。
今月の#クラスパートナーロースターは、群馬県高崎市のwarmth。店主の福島さんは、バリスタチャンピオンプロデュースPaul Bassettでバリスタとして経験を積み、のちにPASSAGE COFFEEの立ち上げに関わります。PASSAGE COFFEE退職後は生豆商社のSYU・HA・RIで若手のグリーンバイヤーとして活躍され、同時に地元の群馬でwarmthを営んで地域を盛り上げています。コーヒー業界の多方面で活躍されている、そんな福島さんの想いを少しだけ紹介。 「お店をやりながらも、グリーンバイヤーの仕事はできるのではないか」SYU・HA・RIの代表、辻本さんとの出会いをきっかけに至った今の働き方。若手が育ち難いコーヒー業界の課題を改善するためにも、任せてもらったので、責任をもって次に任せていくことを大事にしたい。「最終的に、焙煎やクオリティコントロールといった仕事も任せていきたい。後任が失敗しないように、最終的な判断はするけども」とコーヒーショップにおける中核な人材を育てていきたいと想いを馳せます。「抽出から焙煎、クオリティコントロールといった消費国における一連の仕事を経験し、一人ひとりがオーナーシップを持った店舗マネージャー、グリーンバイヤーとして成長してくれると嬉しい」とのこと。福島さんは、コーヒーに関わる「川上から川下まで」を経験できるシステムをどのようにつくれるのか、試行錯誤しながら後進の育成に努められています。 さて、今回、福島さんにご紹介いただく豆はSYU・HA・RIとして買い付けたブラジルの二種類です。一つは、ブラジルバリスタチャンピオンシップで3回優勝されたボラム氏が運営するファゼンダウムのコーヒー。こちらは日本初輸入のロット。ナッツのようで、まろやかな酸を持つというブラジルのコーヒーに対する印象が覆されます。もう一つは、エスピリトサント地域のコーヒー。この地域は、ブラジルの中でも標高が高く、エスピリトサントの農家たちは、過酷な自然環境の中でコーヒーを育てます。限られた農地で、熟練した農家さんが手摘みで選別した豆は、まさに作り手の味が味わえるマイクロロットです。もし「なぜブラジルを二種類も?」という問いがあれば「あえてブラジル二種類にしました」と答えたいこだわりのブラジルをぜひ楽しんでください。 インタビューの最後に「素晴らしいコーヒーマンをどう残していくか」について考えているという福島さんの言葉を、自分は「素晴らしいコーヒーマンなのか」と問い直し、今日もコーヒーを淹れます。ゆっくりと、でも早く誇れる素晴らしいコーヒーマンになりたい。
今月の#クラスパートナーロースターは、岡山県瀬戸内市のキノシタショウテン。店主の木下さんは、飲食店としての原点回帰をする気持ちでお店づくりにこだわっています。便利な時代だからこそ、手を抜かずにちゃんとやりたい、「あたりまえのことをあたりまえに」と想いを話す木下さん。そして今、地元に愛されるキノシタショウテンをはじめとし、複数の姉妹店を営むに至った道程に触れます。 高校生の頃、多様な文化に触れ、視野を広げたいと考えた木下さん。「せっかく日本を出るなら、行先は世界の都、ロンドンだろう」と意気込んで留学。多様性に触れると同時に、日本のことを聞かれても上手く答えられず、まず日本について知らないといけないと強く感じ、早急に帰国をすることに。その後、東京で大学入試を準備しながら働いていたコーヒー屋で、初めてコーヒーの世界に魅了された。 コーヒー屋で店長として4年間勤めた後、より技術と感性を磨くために、職人の街、京都へ。京都では、和食屋のマネージャーとして、農家さんとつながり、食材の選定、鮮度管理までの工程を経験します。当時の経験は「コーヒーも農作物だったんだ」と考え直すきっかけになったそうだ。 その後、独立を目指して故郷の岡山に戻ったものの、既に地元を離れて10年。まずは地元を知るために、郵便局で働き始めた。郵便配達をする中で、地元の方と触れ、日々経験を積み重ねていった。昼は郵便局で、夜は焙煎室で過ごす生活を約1年以上経た末に始めたのが、キノシタショウテンだ。お店の名前の由来は、昔、地元の牛窓で切手やタバコを売る個人商店を営んでいた祖母の想いを継いだもの。 キノシタショウテンをはじめて2年目になるとき、コーヒーの知識と生産地の状況の隔たりを埋めたく、各地に足を運ばれたそうです。同じウォッシュドプロセスであっても川水もあれば、湧水もある。それらがコーヒーの味に大きく影響するということに気づいた。「コーヒーは国ごとで違うよりも、農家さんごとに全く異なる」と話す木下さん。協同で毎年同じ農家さんから買い付けて、しっかり話し合える関係性ありきで、コーヒー屋としてのあたりまえができたと振り返る木下さん。そのあたりまえができて、はじめて消費者に感動を与える「スペシャルティコーヒー」を届けられる。 毎年、一歩ずつ成長していきたいと思いを馳せる。 最後に、木下さんが話してくださった飲食店としての原点回帰とは、今の基準ではなく、昔ながらのこだわり方にあたりまえの正解があると考えること。 だからこそ、あたりまえを徹底することは、安易なことではない。今、改めて問い直したいスペシャルティコーヒーのあたりまえ。人間が操ることができない自然と向き合い、コーヒーをつくることの難しさ。そして、数多くあるコーヒーの中でも、スペシャルティコーヒーをつくることの難しさ。「お互いの立ち位置を理解し合いながら、ただ高品質なコーヒーがほしいとビジネスライクに伝えることはできない」と語る木下さんの姿勢が、私の脳裏に浮かびます。
今月の#クラスパートナーロースターは、香川県・高松市のCORSICA COFFEE DEVEROPMENT。店主の吉村さんは、数々の焙煎の大会で上位入賞を果たすなど、輝かしいご経歴の持ち主。20歳の時に大手チェーン店でアルバイトされたのを機に、いくつかのコーヒー店で働いた後、2011年、30歳の時に独立されました。そんな吉村さんのこれまでの道のりを少しだけご紹介。 幼少時代、漫画やアニメで描かれる”大人の象徴”としてのコーヒーに興味を抱き、友達を連れて入った喫茶店。そこで飲んだブラックコーヒー、、、ではなく、苦くて飲めずにいた吉村少年に、ミルクと砂糖を出してくれたマスターに憧れたことが始まりだったそう。「40歳になってもずっと同じことをしていそう。それならば、この10年で自分で勝負してみよう」と、30歳で現在のお店を開業。当時はまだスペシャルティーの文化が浸透しておらず、吉村さん自身も喫茶店に近いスタイルで営業されていたとのこと。そんな折、今となってはバイブルとされているブルータスのコーヒー特集を目にし、ブルーボトルなど、海外のコーヒーショップに強く刺激を受け、そこから徐々に現在のお店のスタイルを確立されたそうです。また、焙煎では、イベントで飲んだGLITCH COFFEE(東京)のケニアに衝撃を受け、以降、”目指す味わいが定まった”と、浅煎り一本で勝負する吉村さん。 さて、今回、吉村さんにご紹介いただく豆は、Terra Nova(テラ ノヴァ)とAcross The Universe(アクロス ザ ユニバース)の2種類です。お店では常に、同じ”ような”テイストイメージの商品を取り揃えていらっしゃいます。さまざまなイメージの商品がある中で、吉村さんが「うちの入門編」と語るのがこの”Terra Nova”。今回は、グアテマラのマラカツーラという品種の豆が使用されているそう。所謂、フルーティーな浅煎りのコーヒーではなく、しっかりとした焙煎で、滋味深い味わいのコーヒーとのことです。近年、トレンドとなっている特殊プロセスのコーヒーにも肯定的でありながら、「そういった類のコーヒーを取り扱うならば、伝統的なプロセスのコーヒーでも飲む人の心を打てないといけない」と焙煎士としてのプライドも覗かせる吉村さん。俄然、このTerra Novaが気になってしまいます。そして、もう一つの"Across The Universe"では、ウォッシュドプロセスのエチオピアが使用されています。Terra Novaとは対照的に、派手な味わいで、”その対比を楽しんでいただけたら”とのことです。 最後に、「お店のキャッチコピーにもなっているように、あなたにはコーヒーの色が見えますか。豆の情報ではなく、自分の頭の中にあるイメージを引き出せるようなコーヒー体験をして欲しい。そのために、僕が素材の良さを引き出す焙煎をするので、味わいを想像しながら楽しんで欲しい。」と語る吉村さん。情報は確かに大事。でも、結局一番大事なのは揺さぶられる感性を持っているかどうか。僕たちはテイストノートを焼いているのではない。あなたたちはテイストノートを飲んでいるのではない、ということです。
今月の#クラスパートナーロースターは、熊本県・山都町のAppartement。店主の齊木さんは、長年勤めたAND COFFEEを退職後、2022年に、パートナーの里奈さんと二人で現在のお店をオープン。齊木さんはコーヒーで、里奈さんはヴィーガンアイスサンドで、それぞれの強みを活かしながら、山都町を盛り上げるべく、活動されています。そんな齊木さんのこれまでの道のりを少しだけご紹介。 「ずっと現役でいられる仕事を探していた」と語るのは齊木さん。”喫茶店のマスター”に憧れ、大学卒業後は、地元で老舗の岡田珈琲にアルバイトとして入社。興味の赴くままに進む道を決めたものの、いざ働いてみると、コーヒーはほんの一部分で、卵を茹でたりというコーヒーとは関係のない作業ばかりに、当初は「何やってんだろう」と考えることも多かったそう。ただ、そんな齊木さんのもとに、突如、救世主が現れます。 後に、”AND COFFEE”を立ち上げられた山根さんです。斎木さんよりも少し遅れて、岡田珈琲にアルバイトとして入ってこられたそう。一緒に働いた期間は短かったものの、ほどなくして、AND COFFEEを立ち上げられた山根さん。そして、仕事の休憩時間を利用して通うようになった斎木さん。”運命”という言葉がピッタリですね。 斎木さんは、そこで飲む”浅煎りのエチオピア”と「コーヒーは化学だ」と語る山根さんの人柄に引き付けられ、まさに、思い描いていた”ずっと現役でいられる”スペシャルティーコーヒーという世界の扉に手をかけられました。AND COFFEEに加入されて以降は、抽出から焙煎まで幅広くこなされ、お店の顔として、熊本県のコーヒーカルチャーを担ってこられました。 さて、今回、齊木さんにご紹介いただく豆はエチオピアとグアテマラの2種類です。どちらもウォッシュドのコーヒーで、エチオピアは、華やかさよりも甘さが印象的だというイルガチェフェ・ゲデオ地区の豆とのこと。もう一つのグアテマラは、白葡萄や青りんごのような瑞々しく、綺麗な果実味があり、それでいて、サトウキビのような柔らかい甘みが続く、素晴らしいコーヒーとのことです。里奈さんのアイスサンドに寄り添うように、「AND COFFEEにいた頃よりももう少し火を入れるようになった。」と語る齊木さん。コーヒーは人が作るもの。コーヒーを通して、その人の今が見えるから面白いですよね。 最後に、「店舗に来てもらえると嬉しい。ひいては、熊本にも興味を持ってもらえたらいいのかな。楽しんでもらえればと思います。」と言葉少なく、クールに語る一方で、平然とした顔でコーヒーを飲むお客さんに対して、心の中で「もっと熱狂してくれよ!」と叫ぶ斎木さんは、アートワーカーというよりは、”パンクロッカー”という表現がしっくりきます。そうだそうだ!みんな、もっと熱狂しろよ!!
今月の#クラスパートナーロースターは、長崎県・諫早市のnai。店主近藤さんは、JAC2015(エアロプレスの大会)で3位に輝くなど素晴らしいご経歴の持ち主。当時の所属先であるカリオモンズコーヒーを退職後、準備期間を経て、2020年に現在のお店をオープン。今回は勝手に特別版。先日、お店に伺ったのですが、近藤さんの作り出す空間があまりにも素敵だったので、そのご紹介。半分独り言。 タイミングは偶然だったのですが、インタビューの1週間後に長崎旅行を控えていました。実は、パートナーロースターさんと直接お会いするのは今回が初めて。毎月、ロースターさんのお人柄やストーリーを少しでも鮮明にお伝えできるよう努めていますが、やはり、”百聞は一見にしかず”ですね。 マップを片手に、住宅街を歩いていると、突然、広い工場跡地のような半外の建物が現れます。中に、小屋のような箱がぽつりと見えるけど、パッと見ただけでは、それが焙煎室だとは気付かない。”ここ”からがお店という確かな扉や境界線はないけど、空間が放つ雰囲気にスッと背筋が伸びるから、きっと”そこ”はもうお店なんだと思います。棚とか植物とか、古びたコーヒーミルなんかもきっと何気なく置かれてるものもあるんだろうけど、全部全部、近藤さんのもとで調和しているというか、一つの感性で束ねられているようなまとまりが感じられます。結び目はギュッとなってるけど、それでも、不思議と窮屈に感じないのは、きっと、近藤さんのお人柄があってこそ。笑い方がとても豪快で、これ以上ないくらいの笑顔と空間のアンバランスさが妙にクセになるお店でした。 さて、今回、ご紹介いただく豆の一つはニカラグアです。オープン当初から継続的に取り扱われていて、ご自身も直接生産地に訪れたことがあるという思い入れのある豆とのこと。農園主のセルヒオさん曰く、今年は、コロナウイルスや災害の影響で、収穫量が前年の80%減という苦しい状況に。ただ、少しでも力になれればとの想いから、近藤さんは買い付け金額を上げて、サポートされているそうです。「生産者主体のマーケットにしていきたい」と語る近藤さんだからこその取り組みです。 最後に、「諫早っていう小さな町ですけど、個性溢れる豆を皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいなあ、というのと、僕、音楽が好きなんで、お店ではレコードとか流してるんですけど、そういうゆらゆらした雰囲気で、コーヒーも自由に楽しんでもらえたら。」と語る近藤さんでした。コーヒーを音楽のように捉える感覚、僕も分かる気がするな。「焙煎士」ってやっぱり”アートワーカー”だよなって、近藤さんを見ていて、しみじみ。貴重なお話ありがとうございました。
今月の#クラスパートナーロースターは、千葉県のSEVEN STEPS COFFEE CLUB。店主の誠さんと瑞枝さんご夫妻は小学校からの同級生という間柄。瑞枝さんは金融業界のご出身。脱サラ後、今も美容師との二刀流を貫く誠さんと二人でお店を開業。異色の経歴を持つお二人が紡いできたストーリーを少しだけご紹介。 ご紹介の通り、お二人はそれぞれコーヒーとは関わりの少ない仕事でキャリアを歩んで来られました。2010年頃、東京にFuglenがオープンしたのを機に、そこで飲んだコーヒーや、映画『A FILM ABOUT COFFEE』を観たことで、お二人でスペシャルティーコーヒーの世界に傾倒していくことに。その後、一年間、コーヒーについて学ぶため、専門学校へ。その後、佐々木修一さん(PASSAGE COFFEE)や宮崎洋介さん(ESPRESSO GANG)との出会い、そして、協力を経て、お店を開業。「数ある中の一つのジャンルに過ぎないけど、決して、狭い世界じゃない。音楽でいうと、テクノ」だと、独自の浅煎り評を持つ誠さん。その世界へのボーダーを一気に飛び越えて欲しいと、お店では特殊プロセスのコーヒーも積極的に扱われています。ロングボールで一気に前進させるように、ライン際でせめぎ合うのではなく、一気に飛び越えることで、「その手前にある本当に伝えたい味を伝えやすくなる」という言葉がとても印象的でした。 さて、今回、ご紹介していただく豆は、エチオピアとホンジュラスの2種類です。一つは、 誠さんが、「ド定番だけど、スペシャルティーの中心地。中南米の特殊なプロセスの豆も、結局は美味しいエチオピアの味を求めている気がする」と評するエチオピアのナチュラル。もう一つは、辻本さん(SHU・HA・RI)から購入されたというフリーウォッシュドのホンジュラス。「ド定番のエチオピアナチュラルとは対極の世界。全てのオリジンにそれぞれの良さがある」と語るのは瑞枝さん。 最後に、「生産者が丹精込めて育てたコーヒー豆が遥か遠く千葉まで旅して届けられています。私たちは焙煎を通して、そのストーリーをお届けしたい。その素晴らしい豆のポテンシャルが皆様の日常に彩りを与えて、楽しいひと時となりますように。SEVEN STEPSのコーヒーが少しそのお役に立てたら嬉しいです。」と語る瑞枝さん。そして、それに頷く誠さん。歩き方は違っても、目指す目的地は同じ。インタビュー中、二人だからこそ、”ゆっくり”遠くではなく、”早く”遠くに行けるのかななんて考えていました。ありがとうございました。
今月の#クラスパートナーロースターは、熊本県のJUNCTION Coffee Roaster。店主の田崎さんは、二十代後半まで自動車整備士として働かれ、退職後、「カフェ」で働くため、シドニーへ。その後、素晴らしい人やコーヒーとの出会いを経て、スペシャルティーコーヒーに目覚めることに。 シドニー滞在中、Artificer Coffeeの焙煎を担当するなど、輝かしいご経歴をお持ちですが、そこまでの道のりは決して平坦ではなかったようです。「そんなんじゃどこでも働けないよ。」というのは、かの有名なArtificer Coffeeの佐々昌二さんからの一言。 渡豪前、新しい環境に「ワクワクしかなかった」と語る田崎さんでしたが、現実は、履歴書を持ってお店を回っても、なかなか職を見つけられず、ほとんど心が折れる寸前だったとのこと。そんな折、たまたま知人の伝で佐々さんとインタビューが出来ることに。当時は、「佐々昌二」という存在の大きさも知らず、ただただ縋る思いで、話したとのこと。異国の地で生き抜いてきた佐々さんからの厳しくも暖かい助言を受けて、お皿洗いや豆の梱包など、所謂、雑用からコーヒーマンとしてのキャリアをスタート。別のカフェで働く傍ら、佐々さんのもとで、品質管理のカッピングに参加し、徐々に、パッキングスタッフ、プロダクションロースターへとステップアップ。カフェでの仕事を勉強するために向かったシドニーで、まさに人生の転機となる出会いや田崎さん自身の努力が重なり、コーヒーロースターに。 さて、今回、ご紹介していただく豆は、コロンビアとホンジュラスの2種類です。「シドニーで、たまたま友人に連れて行ってもらったコーヒー屋さんで飲んだコロンビアの味が今でも忘れられない」という田崎さん。今でもお店のラインナップの6〜7割はコロンビアというほどのコロンビアラバーぶり。一つは、そんな田崎さんが昨年、念願叶って、現地で買い付けたピンクブルボンのウォッシュド。そして、もう一種類は、コーヒーカウンティの森さんを通して出会ったホンジュラスのコーヒー。「これまで飲んだことも焙煎したこともほとんどなかった豆だけど、ホンジュラスが持つ新たな美味しさに気付いた。」と、取り扱いをスタート。今後、現地買い付けも視野に入れるなど、力を入れている生産地とのこと。 最後に、「初めて、現地に買い付けに行った、思い入れのあるコロンビアと新しく取り組んでいるホンジュラスのコーヒー。二つとも味わっていただくことで、JUNCTION Coffee Roasterを皆さんに届けられると思っている。デイリーで飲みやすいコーヒーを意識しているので、皆さんに毎日飲んでいただけるコーヒーというのが一つでも伝われば良いかな。」と語る田崎さん。魅力たっぷり。もっと書きたいことがいっぱいあったけど、1000字には収まりません